家具・インテリア業界のトップを走り続けるニトリホールディングスの会長・似鳥昭雄氏(80)と、ディスカウントショップの雄「ドン・キホーテ」を運営し、2024年には2兆円超の売上高を記録したパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏(75)。日本の小売業界に一大旋風を巻き起こした創業者2人が、経営を成功に導いた要因について語り合った。

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「私は普通の人ができることが、できないだけ」

 似鳥 これまで、いかにも自分が運を活かしてきた稀有な経営者であるかのような話ばかりしてきましたが、本当のところは、私は普通の人ができることが、できないだけ。だからこそ、自分で起業して頑張るしかなかった。実は私、発達障害なんですよ。

 安田 発達障害? ずいぶん商売の才能が発達した方だと思いますけど?

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20年来の親交がある似鳥氏と安田氏 Ⓒ文藝春秋

 似鳥 7年前に発達障害を特集したテレビを見ていたら、その特徴が自分にピッタリ当てはまって。それで医者に行ったら、そうだと診断されました。74歳のときです。

 思い返せば、自分の名前を漢字で書けるようになったのは、小6か中1のとき。今でも整理整頓ができなくて、机の上はシッチャカメッチャカ。忘れ物もひどくて、眼鏡は100個くらい買ったかな。だから、こうやって財布をチェーンでズボンにつないでいるんです。

 安田 なるほど、それならなくさないですね。

 似鳥 勉強も苦手で、高校入試はことごとく落ちて、最後は校長先生に米一俵届けて、なんとか乗り切りました。大学受験も、残ったのは短大だけ。これは勉強が得意な友人に替え玉受験してもらいました。周囲を見返したいという気持ちが強く、何としてでも入りたかったんですよね。

 安田 いま聞いていて気づいたんですが、似鳥さん、私も同じかもしれない。しょっちゅう物はなくすし、整理整頓ができない。だからこそ、ドンキで「圧縮陳列」をやり始めたくらいで(笑)。

 似鳥 なるほど。そうかもしれませんね。

 安田 日常生活では、まるっきり無能力者なんです。