ボスニア紛争でいえば、「演者」はボスニア政府のシライジッチ外相、「敵」はユーゴスラビアのミロシェビッチ大統領(セルビア人)、「演出者」は『戦争広告代理店』の主人公である米大手PR会社の幹部、ジム・ハーフ氏、というわけだ。
〈それから30年たった2022年2月、スラブ系同士の紛争というボスニア紛争と共通の特徴を持つ、ロシアによるウクライナ侵攻というはるかに大規模の戦乱がおきた。そして私は、開戦から半月もしないうちに、『戦争広告代理店』で描いたPR情報戦が、数十倍の規模で展開されていることに、目を見張らされた。今回も、「三角形の理論」が忠実に実行されていた〉
トランプ大統領の登場で変わったこと
そのゼレンスキー大統領の戦略が、今年に入って大きく崩れた。きっかけは、アメリカのトランプ大統領の登場だった。高木氏は指摘する。
〈あれほど好調だったゼレンスキー大統領の戦略はトランプ大統領に翻弄され続けている。冒頭に描いたように、戦時大統領を象徴してきた「カーキ色のTシャツ」さえ、トランプ大統領の前では着られなくなったのだ〉
高木氏のレポートでは、8月のトランプ=ゼレンスキー会談の詳細な分析、トランプ大統領の新たな情報戦略と翻弄される米メディアの実情、ゼレンスキー大統領を支えていた米PR会社の動き、さらにはロシア側の情報戦の状況などを、詳細に解説している。
16ページ(15,000字)に及ぶ高木氏の大型レポート「ゼレンスキー大統領『PR戦』の敗北」は、月刊「文藝春秋」10月号(9月10日発売)及び、月刊「文藝春秋」のウェブメディア「文藝春秋PLUS」(9月9日先行公開)に掲載されている。

