人気ヴィジュアル系バンド「ν[NEU](ニュー)」のベーシストとして活躍していたヒィロさん(42歳)は、バンドが解散した後、エステティシャンとして第二の人生を歩み始めた。オリコン週間チャートで5位を記録するほどの成功を収めながらも「僕にはもう、音楽を伝える資格がなくなった」と涙した彼が、なぜ美容の道へ進んだのか。

かつてヴィジュアル系バンドのベーシストだったヒィロさん(42歳)。現在のお仕事は…(写真:本人提供)

売れたはずなのに涙が止まらなかった理由

「デビュー曲は、人気番組のタイアップをとっていただき、売れる予感しかありませんでした」とヒィロさんは当時を振り返る。しかし、メジャーデビュー後の道のりは想像以上に厳しかった。初のワンマンライブは客席が埋まらず、2回目のライブで集客に成功したものの、終演後にレコード会社からクビを言い渡された。

 2社目のレコード会社では、CDを5タイプ作り、撮影会などのイベントも多数開催した結果、オリコン週間チャートで6位に入る成績を残したが、期待には届かなかったようだ。さらに3社目のレコード会社に移った際には、オリコン週間チャート5位という最高の結果を出したにもかかわらず、ヒィロさんは「くだらない」と感じてしまったという。

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「デビューした当初はメンバー全員でCD屋さんを駆け回って、少しでも上位に入れば喜んでいたのに。『僕にはもう、音楽を伝える資格がなくなった』と感じて、涙が止まりませんでした」

 メンバー間の関係性も悪化し、2014年にバンドは解散。そこから彼の人生の転機が訪れる。

 バンド解散を家族に伝えた際、兄の奥さんから「音楽を辞めてどうするの? あなたの経歴は一般社会では役に立たない。食べていけないよ」と真剣に忠告され、初めて自分の置かれた状況の厳しさに気づいたという。そこから半年間、実家で暮らしながら美容関係や心理士の資格を取得。最終的に「美容を伝えたい」という思いに至った。

 バンド時代から独学で美容法を学んでいたヒィロさんは、表情筋インストラクターの資格を取得し、美容セミナーを行うようになった。その後「セミナーよりも、直接施術をしてお客様を幸せにしたい」という思いから、バンド時代の貯金を使い果たす覚悟で渋谷にプライベートエステサロン「Dear Lily」をオープン。

「オープン1年で、予約の取れないエステを作る。達成できなければ店を閉める」と決意し、開業から半年後には毎月の予約枠が一瞬で埋まる人気店となった。

エステティシャンとして活躍するヒィロさん(写真:本人提供)

「僕は『変わらないといけない』と言いたいのではなく、自分がやって楽しかったことを伝えたいだけなんです。『悩んでいるより、ヴィジュアル系バンドでも何でも、やってみたほうが楽しいよ』って」とヒィロさんは語る。

 かつてのV系バンドマンが、なぜ美容の世界で成功できたのか。その答えは、彼自身のコンプレックスと向き合う姿勢にあったのかもしれない。

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