水野 あの浜田さんの反応を見て、僕は手応えを感じたんです。先生がズバッと赤字を入れる鮮やかな添削が素晴らしく、このビフォーアフターショーが見せ場になると思った。
それで収録後に「次も来てください。全部の句のビフォーとアフターが見たいです」とお願いしたら、無茶苦茶怒られました。しばらくは私も含めて俳句に無知だった番組スタッフも先生に怒られっぱなし(笑)。それでも夏井先生に褒められると本当に嬉しいから、みんな一生懸命俳句を詠むようになっていったんです。私も俳句の勉強をするようになりました。
夏井 そんな感じでしたね。最初から光るものがあるなと思ったのは、梅沢のおっちゃんとポンチ君(お笑いコンビ、フルーツポンチの村上健志)の2人だけでした。おっちゃんの最初の句は「頬紅き少女の髪に六つの花」。ちゃんと俳句の調べができていて、「六つの花」なんて難しい季語も知っていて驚いた。
梅沢のおっちゃんの試練
水野 梅沢さんは幼い頃から舞台に立ってきた方だから、七五調のセリフ回しが身体にしみ込んでいて、それで俳句のリズムに抵抗感がなかったと言ってましたね。
夏井 でも、おっちゃんの苦労はそこからだった。自分の気持ちのいい調べを作るためには、もっと言葉を知らないといけない。それで陰ながら努力したのでしょう。
水野 もともとお勉強は好きじゃないとおっしゃっていましたよ。
夏井 ね。おっちゃんが偉かったのは、課題にぶつかりながら「もっといろんな言葉を知りたい」と歳時記を買ったりして、学び直しの生涯教育みたいにどんどんのめり込んでいったこと。季語一つとってもそう。「南風」と書いて、普通に読んだら「みなみかぜ」を「なんぷう」と四音でも読めれば、漁師言葉で「はえ」とも二音でも読める。そういう知識があれば応用が利くから、心地よい五七五の調べが作りやすくなる。
※本記事の全文(約7000字)は、「文藝春秋」2025年10月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(夏井いつき・水野雅之「放送500回突破! 『プレバト!!』流 俳句名人への道」)。
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