「週刊誌の記者って、もっとギラギラした怖い人なのかなって」

――奥山さんご自身、北海道から上京して女優の夢を追求された経験と、日向子が記者の世界に飛び込む姿とで重なる部分はありましたか。

奥山 夢を追いかける上で、まずはその世界に飛び込んでみるという姿勢が似ているかもしれません。私も色々と考え込む前に、とりあえず俳優の養成所に入ったという感じでした。その後、「俳優はたくさん話さなければいけないんだ、常に人に見られるんだ」と、この仕事の現実を徐々に理解していきました。

 自分で選んだ道ではありますが、実際に飛び込んでから初めて世界が見えてきたという点は、日向子と重なる部分だと思います。

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©︎平松市聖/文藝春秋

――奥山さんには役作りのため、『週刊文春』のデスクに取材に来ていただきました。

奥山 お話を伺ったデスクの方は想像していたよりずっと親しみやすく、「週刊誌って本当に普通の方々が作っているんだな」と実感しました。週刊誌の記者といえばギラギラとした雰囲気で、隙あらば人の裏側を暴こうとする怖い存在だと思っていました。

 しかし実際にお会いすると、とても素敵な方で、少し拍子抜けというか、「あれ?」と意外に感じました。もちろん、穏やかな外見の下に鋭い視点や強い芯が隠されているのですが、想像していたような敵意は感じず、そのギャップが非常に興味深かったです。

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――その取材を通じて、何か新しい発見はありましたか。

奥山 印象的だったのは、記者の方は「スクープを取ってやろう」という姿勢ではなく、「自分が面白いと思う話をみんなに聞いてほしい」という気持ちでいるということでした。人を傷つけるためではなく、自分の興味や関心を突き詰めて記事を書いているのだな、と。だからこそ、「面白いと思うこと」に責任を持っているのだと感じました。

 私自身は他人のゴシップにはあまり興味が持てないので、週刊誌の記者という仕事に全面的に共感したわけではありません。ただ、一つのことを探求していく姿勢は、俳優の仕事にも通じると思います。例えば、台本に「座る」と書いてあるとき、ただ座るという動作をするのではなく、「なぜ座るのだろう」と考えながら演じたり。自分の目で見て感じた疑問を、自分の頭で考えて突き詰めていく姿勢は、同じように大切にしていきたいです。

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