移民の「社会統合」の問題ですね。警戒すべきなのは、「多文化共生」という一見、聞こえの良い言葉です。「マルチカルチャリズム(多文化主義)」をインテリは好みますが、結局はそれぞれの文化に閉じこもる「モノカルチャリズム」にすぎない。移民が出自ごとに共同体をつくることを尊重する、英米流の多文化主義は、社会統合の放棄や失敗を正当化する方便に用いられています。

 必要なのは「多文化共生」ではなく「同化(社会統合)」なんです。同化には時間がかかり(2、3世代必要なこともある)、受け入れ側の社会には寛容さが求められますが、最終的にはその社会に同化できないと移民自身も幸せになれません。

慶應義塾大学名誉教授の堀茂樹氏は、SNSなどで参政党への共感を示してきた ©文藝春秋

移民同化の条件

 毛受 堺屋太一さんに『限界国家――人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新書)という拙著の前書きに書いていただいたのは、忠臣蔵の赤穂浪士の1人、武林唯七が中国人移民の3世なのに日本的な価値観の持ち主だったこと。つまり、移民も3世にもなれば、完全に同化する。日本の社会にはそうした統合力が備わっているから心配ない、と。

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 安藤 すでにいる外国人に日本社会に同化してもらえる環境を整えるのは、政府の責務です。

参政党幹事長兼政調会長の安藤裕氏 ©文藝春秋

 毛受 私はドイツの移民受け入れを調査したことがありますが、ドイツ各地にトルコ系のコミュニティがあります。ドイツ語を話さずに仕事も子供の教育もできてしまうことが問題です。こうなるとドイツの社会とは没交渉になり、それが貧困地帯となれば、ホームグロウン・テロ(自国産テロ)の温床になりかねません。受け入れ社会との交流と統合は不可欠です。

※本記事の全文(約9000文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年10月号に掲載されています(安藤裕×堀茂樹×毛受敏浩「激論!日本人ファーストを問う」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

「日本人の目が変わってきた」

自民党政権が放置した悪循環
「私生活」「政治」「人道」の区別
移民なしに社会維持はできない
「人数制限」は不可欠
移民同化の条件
日本語を高級なものとして教える
外国人政策をめぐる国民的議論を

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