岡村 すごい(笑)。それ、本当に応募したと聞きましたけど。

大竹 しました(笑)。16歳の役なのに。すると東宝の人から電話がかかってきたんです。「大竹しのぶって書いてあるんですが、あの大竹しのぶさんですか?」って。「そうです」「本当に受けるんですか?」「受けたいと思います」。落ちたんですけど(笑)。

彼の前では「花束の私」を封印していた

岡村 オーディションから始まった大竹さんの役者人生、ここで再びオーディションに挑む、というのが面白いですよね。復帰するにあたっては、さんまさんに相談したりもしたんですか?

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大竹 もちろん、さんまさんにも言いました。「やっぱりお芝居をしたいから、もう1回仕事をしようと思ってる」って。すると「ああ、やれば」と素っ気なく(笑)。あまり興味を持ってくれなかったですね。女優としては。

 

岡村 結果、さんまさんと離婚することになってしまいます。それはやっぱり、さんまさんが大竹さんの仕事に理解を示してくれなかったから、ということですか?

大竹 というより、お互いに気遣い合ってしまったんです。すごく覚えているのは、『ラヴ・レターズ』という朗読劇(90年)を役所広司さんと一緒にやったときのこと。終演後、楽屋に役所さんの奥さまが訪ねていらっしゃって、和気あいあいとして、すごく羨ましいなと思ったんです。

 私は子供たちを母に預け、さんまさんも家で一緒に面倒を見てくれていたので慌てて帰って、でも大きな花束を抱えて華やかに帰るのはいけない気がして。いま考えるとバカなことだと思うけど、そのときは、家では普通のお母さん、普通の奥さんでいなくちゃと思ってたから、花束を隠して「ただいま」って言って、すぐに着替えて子供の面倒をみて。

 でも主婦の私も私で、舞台を終えて「ありがとう」って花束をもらうのも私。両方私なのに、彼の前では花束の私を封印してた。そんな生活、続くわけがないですよね。