「年収300万円を超えることはないと思う」

「警備員時代は350万円ぐらいの年収があったけど、この2年間は270万円台がやっと。今の仕事をやってても年収300万円を超えることはないと思う」

 マイホームはとっくの昔に諦めた。運良く公営住宅に入れたのでずっと住み続けることになるだろう。運転免許は持っているが維持費を賄えないのでずっとペーパードライバー、年に4、5回レンタカーを運転するだけ。お陰でずっとゴールド免許だ。

「クリーニング工場の収入だけでは生活がきつい。なのでゴールデンウィークとかお盆休みの時期は派遣のアルバイトもやっているんです。交通量の調査で幹線道路を走る車を車種別にカウントするとか、大きな駅で利用者を男女別、年齢別にカウントしています」

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 日給は8500円だが、年間で20日やれば17万円になる。これがあるのとないのでは懐具合が段違いだ。

「わたしぐらいの年齢になると出世している奴はかなり出世している。地元の大学から地元や地元近隣の公務員になった人は部長級、局長級に出世している人がいる。東京の上位大学に入れた人だと大手企業の取締役とか執行役員に昇進している人もいます」

 数年前に祖父の17回忌があり、お寺で親戚たちと久しぶりに会ったのだが、長兄からお前の同級生だった誰それ君は警察に奉職し、どこかの副署長さんになっているとか、○○さんの旦那さんはお医者さんで大学病院の准教授になったらしいという話を聞かされて、とても嫌な気分になったことがあった。

「50歳になったときに、どこでどうやって調べたのか高校や大学のクラス会・同窓会の案内状が届いたのですが無視した。中年になってクラス会などに出てくるのは上手くいっている人。大成功じゃないけど失敗はしていない人でしょ。自分は右肩下がりだからね……。卑屈だと思うけど」