週刊誌の新人記者を主人公にした小説『スクープのたまご』(大崎梢著・文春文庫)がTBSでドラマ化され、2025年10月より放送開始された。本作では主人公・信田日向子が、配属された週刊誌部門で記者として奔走する様子が描かれている。原作者の大崎梢さんと、主人公を演じた奥山葵さんによる対談の模様をお届けする。二人が『週刊文春』の現場を訪れて驚いたこととは。(全2回の前編/続きを読む)
週刊誌と縁遠い自分が抱く等身大の感情を投影したかった
――奥山さんには今回、主人公の新人記者・信田日向子を演じていただきました。大崎さんは執筆当時、日向子をどのような女性として描こうと考えていたのでしょうか。
大崎梢(以下、大崎): この作品を書くまでは、週刊誌というものを強く意識したことはなかったんです。だからこそ、「何もわからない私が、もしも突然、週刊誌の編集部に配属されたら」という、ある意味等身大の感情を日向子に投影して、記者としてのキャリアがゼロから始まる姿を描こうと思いました。
奥山葵(以下、奥山): 私が原作を初めて読んだ時に面白いと感じたのは、この作品が週刊誌を題材にしながらも、その仕事を美化しすぎていないという点です。日向子自身も最初は週刊誌記者という仕事に疑問や戸惑いを抱いているんですね。この役は今の世の中の人たちが週刊誌に対して抱える疑問を代弁しているようなもので、私も自然と日向子に共感することができました。
――お二人には、撮影前から交流があったとか。
奥山: 日向子を演じるにあたって、撮影前に大崎先生に「日向子はジャーナリスト志望だったのでしょうか」と、質問させていただいたんです。彼女がどんな女の子なのか、どういうことに一生懸命になれるのかをもっと知りたくて。
大崎: 日向子は元々ジャーナリスト志望ではなく、文藝の編集者になりたいタイプでした。一見すると、日向子と奥山さんはまったく異なる世界で生きているように思えます。でも、お二人とも同じ20代で、念願の場所で働いているという共通点があります。日向子はいい編集者になりたいと思っていますし、奥山さんはいい役者になりたいと思っている。そういった部分は同じだと思います、とお返事させていただきました。
奥山: 感激しました。まさかお返事をいただけるとは思っていなかったので。大崎先生のアドバイスをいただく前は、私自身、日向子と自分は違う世界の人間だと思っていました。でも、先生が言ってくださったように、私の俳優としての一生懸命さと日向子の編集者としての一生懸命さを重ね合わせることで、私自身の真剣な姿勢がそのまま日向子の演技につながるかもしれないと、少し自信をいただきました。



