「でも彼氏は…」
「そうかもね。でも彼氏は、毎日笑顔で送り出してくれて、帰ればセックスしてくれるから、私はそれで幸せです」
自分の彼女が見ず知らずの男に抱かれ、それで得たカネで自分は暮らす、そんな状況を彼氏は許せるものなのか。一方、紗希は彼氏のことを信じきっているのか、それとも騙されるのではと疑いつつ、彼氏を信じる自分に酔っているのか。しかし紗希は、なんど質問を重ねても、「私はそれで幸せ」と言うにとどまった。
紗希の持論は僕からすればまったく腑に落ちないものだった。恋愛感情もないまま彼氏は、紗希がいわば恋愛のトランス状態にあるのをいいことに、ただ単にホスト時代に培った色恋営業の手口を応用し利用しているだけだとすれば、むごいというほかない。
ひいては紗希が、ホストの売り掛けを理由に街娼をする梨花や恵美奈と重なる。それを美化する装置として、ホストクラブが使われている。
最近よく聞く『ホス狂い』という言葉の裏で、若くして春を売る街娼たちが量産されているのである。さらに取材を進めてみても、大久保病院側に立つのはホストやメンコン、メン地下にハマる女の子が大勢を占めたのである。しかしホストたちに出会わなければ、街娼という営みには到達しえなかったはずだ。
暮夜ひそかに、“現在地”は売買春に魅せられた男女で賑わっていた。女性はみな、ホストの売り掛けなどを理由にこの地に流転した、迷える羊たちである。
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