50歳を迎え、「他の人とは違いすぎる」「あの頃に戻りたい」と人生を振り返るようになったのは、東京都出身・在住の富永嘉代子さん(50)。
大学卒業後、現在は派遣事務とアルバイトで年収約330万円。79歳の母と同居している。彼女はなぜ今の人生を憂うのか? そこには、残酷な「非正規女性のリアル」があった――。第1回目では、彼女の人生を変えた「離婚事件」を、社会問題化しつつある「ミッドライフクライシス」(中年の危機)に直面した50代を追った、増田明利氏によるルポルタージュ『今日、50歳になった―悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)から一部を抜粋してお届け。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全3回の1回目/続きを読む)
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高身長・高年収のパートナーを見つけたけど…
帰宅して郵便受けを開けたら派遣会社からの封筒が入っていた。中に入っていたのは今年最後の給与明細書と源泉徴収票。
「今年は同じ派遣会社経由でふたつの職場で働きました。コロナも落ち着いてきたので空白期間がなかったのは助かりました」
今年1年間の給与収入は約310万円。他にも1日単位のアルバイトを20日やったので総収入は330万円ぐらいにはなりそうだ。
「派遣労働は15年近くになりますが、年収はどの年もこんなものです。突発的に10~20万円高くなる年もあるけど、350万円を超えることはまれです」
富永さんが大学を卒業して就職したのは大手鉄鋼会社直系の販売会社。簿記2級の資格を持っていたのでずっと経理部門で働いていた。
結婚したのは2002年。28歳のときだった。運輸業界で働いている人で富永さんより2歳上の30歳。有名私大卒で身長は180cm以上、収入も高く、いわゆる三高男。
「両方ともそれなりの収入があるので目黒のマンションで暮らし、職住近接の生活ができていました。その頃に言われていたDINKsを地で行く暮らしぶりでした。家事はきっちり分担、給料日直後の週末は少し贅沢なディナーを。年末年始とかゴールデンウィークには旅行を楽しむ。こんな感じだったのですが」
結婚して1年ほど経った頃に夫が福岡に転勤になる。これで仕事を辞めざるを得なかった。
「夫が勤めていた会社は、単身赴任は学齢期の子どもがいる場合という決まりだったので、わたしが仕事を辞めなくてはならなかったんです」
