「全然そんなことはなくて(笑)。『(勝男は)上京してきたキャラにしたいね』という話の流れから、エピソードを考えやすいということで、僕と同じ大分県出身という設定になりました。もし僕がほかの地域出身だったら、勝男の地元もそこになっていたかもしれません。これはしっかりお伝えしておきたいですね」

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』1巻より

 料理の描写も、本作の見どころの一つだ。

「僕の地元の名物である『とり天』が出てくる回は思い出深いです。谷口先生にはあまり馴染みのない料理だったため『おかしいところはないですか』などといったご質問に答えつつ、あくまで料理素人の勝男に教えるシーンなのであまり専門的にはならないように……と考えました。基本的には谷口先生ご自身が料理がお上手なので、いつもあがった原稿を拝見して『おいしそうだな~』と眺めています」

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大分県のご当地グルメ・とり天を作るシーン(『じゃあ、あんたが作ってみろよ』2巻より)

「うちの夫みたい」「リアルすぎる」共感の声が続々

「あるある」「うちの夫みたい」「リアルすぎる」と読者から共感の声が多く寄せられる本作だが、特定のモデルはいないという。

「キャラクターの創造に関しては打ち合わせで話した内容や雑談、それに加えて谷口先生の身の回りの方々や日々の出来事から着想を得ているのかなと思います」

 担当編集として特に好きなシーンについて、ゴトウさんは「ひとつは3巻収録の15話。過去の勝男と鮎美を描いた見開きのシーンはしびれました」と語る。さらに、

「4巻に収録されている26話で、打ち合わせでご相談して『こうなるかな』と思っていたのとまったく違った内容のネームが届いて。それにもかかわらず説得力と『原稿で見たい!』と思わせてくれる力が凄くて、『これでいきましょう』となったのは今でも記憶に残っています」 

担当編集者・ゴトウさんのお気に入りは、椿(ドラマでは中条あやみが演じている)のこのセリフだという(『じゃあ、あんたが作ってみろよ』2巻より)

原作のテーマを大切にしつつ大胆に構成されたドラマ

 放送中のドラマについても、毎話楽しんでいるという。

「特に、第1話で勝男が筑前煮を作るくだりで、スーパーに買い出しに行っても食材の場所や調味料がわからない! というシーンは、原作をより面白くしてくれていてすごいなと思いました。第2話の、勝男が肌着のまま顆粒だしを持って追いかけるシーンも大好きです。原作のテーマを大切にしつつ脚本家の安藤奎さんによって大胆に構成されたドラマオリジナルの内容を、毎週新鮮な気持ちで拝見しています」 

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』1巻より

 読者層については、「どちらかというと女性読者が多いですが、『これは俺かも』という男性読者のご意見も増えてきました」という。

 あらためて、本作の見どころは?

「『自分も変わることができるかもしれない』。そんなふうに、誰かの背中を押せるような作品となっていたら本当にうれしいです。漫画もまだ完結していませんので、ぜひ、ドラマと漫画それぞれ最後まで楽しんで、見届けてほしいです!」

次の記事に続く 「ネットのレシピは手抜きばかり」「切って煮ればいい」料理上手な彼女にフラれた“化石男子”が筑前煮に挑戦→出来上がりは…《マンガ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』》