自分自身で「いいじゃない」
棚橋 若手のころは脚がだいぶ太かったんで、ショートタイツでもよかったんですけど、ひざをケガしてから筋量が戻らなくて、ロングタイツに変えたんですよ。そうしたら「いいじゃない」ってなって。
ユリオカ 誰が「いい」と言ってくれたんですか?
棚橋 自分自身の「いい」です(笑)。自己肯定です。
ユリオカ 自己肯定がひどいっていうね。
博士 いやいや、レスラーたるもの、芸人もそうですけど、自己肯定できないやつは舞台に出るなって後輩にいつも言ってますよ。自己肯定して自分をアゲていくのは大事。遠慮して後ろにひっこんでるようじゃダメですよ。
角度的に届かない方向に手を出します(笑)
棚橋 タッグマッチも一緒です。「オレが出る」って、コーナーでは必ず手を出していてほしいんですよね。
ユリオカ でも空気読まずに、すぐさまタッチを求めてきて「もうちょっと休ませろ」みたいなことはないんですか。
棚橋 そういうときは角度的に届かない方向に手を出します(笑)。
博士 木戸修さん的な奥ゆかしさとか、新日の伝統的序列を破ってみせたのが、「咬ませ犬」発言の長州力さんでしたよね。
ユリオカ 棚橋選手と長州イズムってあまりピンとこないんですけど。
棚橋 そもそも僕は長州さんの付き人でしたから。3度目の新弟子検査でOKをくださったのも長州さんですし。
博士 たけし軍団では、若手は必ずダンカンさんの付き人を経験するんですけど、新日の付き人は、どうやって決まるんですか。
棚橋 2、3年付き人だった先輩から引き継ぐことが多いですね。藤波さんにはずっと柴田(勝頼)さんが付いていて、僕は長州さんと同時に武藤さんの付き人もしてました。
2人きりの空間、爪で一個一個はがしていく(笑)
ユリオカ 長州さんと武藤さんは真逆なタイプ。全然違う感じがするけど。
棚橋 武藤さんはアメリカ経験があるので、付き人としてやることは荷物を運ぶぐらいで。でも、武藤さん、黒師(使)無双という全身にペイントするレスラーをされていたときがありまして……。
ユリオカ あった。第3の化身ね。あれ、付き人が書くんですか。
棚橋 そのペイントを落とすのが僕なんですけど、ボディーソープで洗っても取れないので、武藤さんの部屋、2人きりの空間、爪で一個一個はがしていく(笑)。
博士 『お笑いウルトラクイズ』の粘着ネバネバクイズもそうだった。終わったらお互いのネバネバをはがすんですけど、皮膚が弱い春一番なんて肌ボロボロでゾンビみたいになっちゃって。
ユリオカ ネバネバクイズって、プロレスラーの方がここぞというときに出てきましたよね。宴会場のドアを開けるとリングがあってね。
博士 ダチョウ倶楽部がお約束で「おい、ライガー、バカ野郎!」とかアオるじゃない。お笑いがアオって、プロレスラーにボコボコにやられるっていうパターンで、みんな何回ケガしてるかわからない。
ベストファーザー賞、本気で獲りに行きました
棚橋 当時はやっぱり、プロレスがメジャーだったからじゃないですか。みんながプロレスとはこういうものだと知っているから、プロレスラーとしてのテレビとかでの役割も決まっていたというか。今はこれからどんどん大きくしていこうという段階なので、プロレスラーのかたちもいろいろあっていいのかなと。
博士 イクメンやりながらチャンピオンみたいなね。ふつう狙いにいかないじゃん、プロレスラーでベストファーザー賞。
棚橋 どうも、ベストファーザーです(笑)。「絵本の読み聞かせに行きました」とか「通学路の旗持ち当番しました」とかブログでアピールして、本気で奪りにいったんで。
(構成/皆川秀)
(後編へ続く)