数年前から私は「断捨離」を進めてます。この年になってもかわいい犬のぬいぐるみとか欲しくなっちゃうんですが、「ダメ」と自分を戒めてるんです。食べてなくなるもの以外は買いません。実際には食べてなくなるわけじゃなくて、どこかのお肉になっているわけですが─。

男には思い出しかない

 そして使わないものは、どんどん捨てています。結婚式の引き出物だったり、人からもらったグラスや食器類は店を開けるほどありましたし、お盆だけで40枚ぐらいありましたからね。それも全部捨てました。唯一、今でも持っているのは、五木ひろしさんの結婚式の引き出物でもらった輪島塗のお盆だけ。

 それに比べると、あなたのご主人もそうですが、男の人ってモノを捨てるのが苦手な方が多いですね。どうもモノに思い出を託したがる傾向があるように思います。

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 ウチのダンナも例外ではありません。だから私は、引っ越しの度にダンナに気付かれないように彼の“思い出の品”を処分してきました。学生時代に使ってたキャンプ道具一式が詰まった段ボールには「青春の思い出」と書かれてました。「さらば青春」と呟きながら、容赦なく捨てたことは言うまでもありません。

 ほかにも動かなくなった腕時計14本、定年後に買い集めたウクレレ26台、二度と握らない古いゴルフクラブ、どんだけ頭あるんやと思うほどのキャップ帽、売れないホストかと呆れるほどのネクタイは100本以上ありました。

 松村組のコンサートを観た興奮のまま買い求めた和太鼓……のバチ。太鼓はお値段が張ったのでバチだけ買ったのですが、太鼓がなくては意味がありません。仕方なく鍋の具材をとる菜箸替わりにしましたが、太すぎて白菜もエノキもつかめません。

 無駄などうでもよいモノたちの山。お察し申し上げます。ですが、この間、夫がこう言ってました。

「この年になるとねぇ、男には“思い出”しか武器がないんですよ」

 私たちから見るとどうでもよいガラクタでも、彼らにとっては長きにわたって人生をともに生きた証であり、思い出のよすがなのでしょう。

 私はそう思って半ば諦めております。どうせそう遠くない将来に星になるのです。そのときはスッキリしましょうね。能面もウクレレも和太鼓のバチも燃やしてやるんです。あ、バチはやめとこ。

 罰あたるわ。

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