日本を代表する司会者・上沼恵美子さんによる「週刊文春」の大人気連載を書籍化した『上沼恵美子の人生笑談 白黒つけましょ』。発売直後から話題を集めている同書より、「物を捨てられない夫。断捨離させるには?」を紹介します。(全2回の1回目/続編に続く)

上沼恵美子さん ©浅井佳代子

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「母の日」のプレゼントって、なかなか味わい深いものがありますね。今年、長男からは「お母さん専用」のマグカップをもらいました。

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 小学生か、思いました。

 そういえば、この子が本当に小学生だったときは、のしに自分の名前を書いたビールの大びんを1本もらったこともあります。私がビール好きで1日20缶飲んでた頃です。

 世間でよくあるのは「肩たたき券」というヤツですね。私も何度かもらいましたが、今日は本当に疲れたな、というときに、いざ券を取り出して「じゃあお願いします」と頼んだら、それをチラリと見た息子は一言「ああ、今日はお休みです」。

 あの店が開いてるとこ、これまで一度も見たことありません。

【人生相談】

 結婚してもう40年近くになりますが、物を捨てられない夫にずっと悩まされてきました。

 とくに夫の部屋は目も当てられません。大量の古本に、かつて使っていた家具家電、何十年も前の子どもの作文や図画工作なんていうものも、部屋の床から押し入れの中まで乱雑に放置され、完全なゴミ屋敷と化しています。

「いい加減に整理して」と言っても「これは貴重なものだからいつか使うかもしれない。『断捨離』なんて、くだらないものに踊らされるな」と、なぜかこちらが怒られる始末。今はなんとか被害を夫の部屋に止めていますが、油断すると廊下にも物が積まれており、いずれ家全体がゴミ屋敷になってしまいそうです。どうすれば夫に断捨離を決意させることができるでしょうか。(62歳・女性 福岡県)

深夜の怪音の正体は…

 3日前のことです。深夜3時くらいに「ガタガタッ!」と大きな音がして目が覚めました。一緒に寝ている豆柴のスーも跳び起きました。

 おそるおそる寝室を出て、灯りをつけてみましたが、リビングにも台所にも誰もいません。2階にはめったに上がらないのですが、今回ばかりはそうもいきません。階段を一段、一段、慎重に上がっていきました。スーもついてきてくれます。こんなときは小さい犬でも心強いものです。

「スー、もし怪しいヤツがいたら、跳びかかってやっつけてね」と心の中で叫びながら、長男の部屋のドアを開けました。しばらく使ってないベッドがそこにありました。続いて次男の部屋。同じく主がいなくなった勉強机が寂しそうにあるだけでした。

 そして別居中の主人の寝室へ。そーっとドアを開けた途端─。

「ギャー!」

 私は腰を抜かしました。壁一面を埋めつくした主人が彫った能面がこちらを向いて、薄気味悪い表情で笑っていたのです。私の悲鳴につられて、スーは主人のベッドに跳び乗って吠えまくりました。私は「彼が星になったら、あの能面は火だるまにしてやろう」と心に誓いました。

 深夜の怪音の正体は翌朝、判明しました。私の部屋に飾ってあった私が描いた愛犬の絵の額が落ちた音でした。私がパステルで描いた犬たちの絵は50枚を超え、飾る壁がなくなっていたのですが、これに懲りて壁に掛けるのはやめました。