吉原の安全神話は、意外な事件で崩れた――。高級店での殺人事件や、営業廃止命令を受けたソープランドの理不尽な現実など、街の裏側には想像を超える闇がある。元スタッフ・W氏の証言から見えた「吉原の現在地」とは? 花田庚彦氏の新刊『台東区 裏の歩き方』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
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店舗内で殺人が起きて“安全神話”が崩壊
こうしたさまざまなトラブルに対して、「吉原に勤めていると、感覚が麻痺しちゃって、何とも思わなくなってきちゃうんですよ」と苦笑交じりで語っていたW氏。そんなW氏でも衝撃を受けた事件が、二つあるという。
「近年で一番衝撃を受けたのは、2023年の5月に有名高級店『Y』で起こった殺人事件です。事件を起こしたのは、親やサラ金から借金しながら嬢に入れあげた男。資金繰りが厳しくなってキャンセルが増えると、嬢からNGを出されたそうです。逆恨みをした男は偽名で嬢の予約をとり、店舗内で嬢を殺害した。そんな事件だったと記憶しています」
W氏が驚いたのは、吉原の安全性を脅かす事件だったからだ。
「もともと、デリヘルみたいな派遣型風俗はいろいろなトラブルが起きやすいけど、店舗型は安全っていうイメージがありましたからね。でも、この事件では店舗内で嬢が殺されてしまったので、いわば安全神話が完全に崩壊してしまった」
