フェンシングとニューロティックなミステリーを絡めた話題作『ピアス 刺心』が公開。スタイリッシュな映像と衝撃的な展開、リウ・シウフー、ツァオ・ヨウニンら台湾の若手実力派の共演など見どころの多い本作を、映画評論家・真魚八重子がレビュー。

© Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

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試合相手を刺殺した兄が帰ってきた

 監督・脚本は、本作が長編デビュー作となる台湾の俊英ネリシア・ロウ。フェンシングとミステリーを絡めた異色の作品である。実際に台湾で起こった事件に着想を得ているという。

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 主人公のジージエは幼い頃に川で溺れた際、兄のジーハンが見ているだけですぐに手を差し伸べてくれなかった出来事があった。母は遠目からその様子を目撃しており、ジーハンが邪悪さを持っていると信じ、彼に対して否定的な態度を取るようになっていた。しかしそれ以降も普段の兄弟仲はうまくいっており、溺れた際の出来事だけが、何故そんな振る舞いをしたのかわからない異様な事柄だった。

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 そしてフェンシングの試合中に、折れた剣で対戦相手を刺殺してしまったジーハン。事故という発言が信じてもらえず、少年刑務所に7年入っていたがいよいよ出所してくることになる。母がジーハンを責める言葉に洗脳されているジージエは、ジーハンとどう接したら良いかわからない。しかし兄は昔と変わらず弟思いで、ジージエは兄の事件は「事故だ」と語る兄の言葉を信じ始める。そして毎晩のように、弟がフェンシングの練習をする姿を見守ってくれている兄の思いやりから、ジージエはジーハンからフェンシングを教わることにする。

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