「親としては応援してやりたいけど心配ですよ」――54歳、海運会社の管理職・加納正輝さんはこう語る。妻と二人の息子と暮らす日々、仕事は順調で健康面にも問題はない。だが、彼には親として避けられない「ある悩み」があった。

 社会問題化しつつある「ミッドライフクライシス」(中年の危機)に直面した50代を追った、増田明利氏によるルポルタージュ『今日、50歳になった―悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)から一部を抜粋してお届け。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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54歳・管理職男性のある悩み

 仕事はそこそこ上手くやっている、健康面でも心配なことはない、妻との関係も良好。物流関係の会社で管理職を務めている加納さんは悩みや心配事とは無縁に見えるが、2人の息子のことが気がかりで、この先どうするつもりなんだと彼らの将来が不安で仕方ない。

 まずは26歳になる長男のこと。この年齢になるのに弁護士を目指して司法試験浪人をしているという。

「法科大学院を卒業して去年、今年と司法試験を受けたけど駄目でして。本人はもう1回だけ挑戦したいと言っているのですが、親としてはもう見切りをつけて就職してほしいと思っているんです」

 長男はかなり優秀らしく、県立のトップ高校から最上位ランクの私大の法学部に入り、更に法科大学院で勉強してきたという経歴。

「去年が初めての試験だったのですが一次の短答式試験は突破できていた。今年は論文試験の対策もバッチリだと言っていたのですが一次の短答試験でしくじってしまいまして。半月ぐらい落ち込んでいました」

 加納さんと奥さんを交えて今後のことを話し合ったところ、「ここで諦めたら今までやってきたことがすべて無駄になる。あと1回だけ挑戦したい」という強い意志があり、来年も受験することになった。

「親としては応援してやりたいけど心配ですよ。所属がない、収入もほとんどない、社会保障も貧弱なのだから」