問題があったのは長男だけじゃなかった⋯⋯。54歳、海運会社の管理職・加納正輝さんを襲った「さらなる試練」とは?
社会問題化しつつある「ミッドライフクライシス」(中年の危機)に直面した50代を追った、増田明利氏によるルポルタージュ『今日、50歳になった―悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)から一部を抜粋してお届け。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の2回目/最初から読む)
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「勝ち組」だった次男に起きた異変
次男は大学を卒業して3年目、再来月には25歳になるのだが、新卒で入った会社を7か月で退職してしまい、再就職した会社もやはり半年ちょっとで辞めたということだ。次男が新卒で就職したのは大手建設会社。他にも著名企業数社から内々定を得ていたそうで、就活エリートと言ってもいい勝ち組だった。
「就職した年の夏にはもう文句が多くなってきて。わたしもいろいろ聞いたのですが、言っていることが漠然としていて問題の本質が見えないんです」
次男が言うのは、この会社では成長できない。予想していた研修がなかったというもの。
「別の会社に進んだ大学の友だちと話すと『うちではこうだ』『俺のところとは違う』となって、自分の入社した会社がおかしいと思ったみたいなんです」
研修内容は会社によって違うのが当たり前。仕事のやり方も、上司や先輩が手取り足取り教える方法と、教えるより覚えろと実践第一でやる方法がある。サラリーマンの先輩としてそう説明しても、納得していない顔つきだった。
「配属にも不満があったみたいでしたね。本社や規模の大きい支社でインフラ関連のプロジェクトに参加できると思っていたらしいのですが、実際に配属されたのは南関東の営業所で、小さな公共工事や小規模開発のビル、マンション工事を担当させられたのが気に入らなかったらしい」
