現在の長男の暮らしぶりはどうかというと、ほぼ1日中自室で法律の専門書、過去問集と向き合っている。
「たまに図書館の自習室へ行って気分転換しているみたいですが、丸1日部屋に籠って誰とも喋らない日もある」
1日の勉強時間は10時間。食事も自室で本を読みながら済ましている。ひきこもりよりましだが親としては心配だ。
「食と住は面倒見るけどそれ以外は自分でやれということで、土日だけ病院の夜間受付をやっている。だけど月収にしたら8万数千円、これでは蓄えを作るなんて無理だし」
自分で自治体の国民健康保険と国民年金に加入して保険料はきちんと払っているようだが、生命保険や疾病保険などには入っていない。
「26歳の青年ならお洒落に興味もあるだろうけど、長男が散髪するのは2か月ごとに1400円のカットハウスに行くだけ。冬場は毛玉だらけのセーターの上に半纏を羽織っている。昔のご隠居さんみたいですよ」
家族以外の人間関係は希薄で、誰かから電話がかかってきたことはないし、去年も今年も年賀状は1枚も来なかった。当たり前だが恋人もいない。
「次も不合格だったらもうおしまい」
「次も不合格だったらもうおしまいだよと言ってあります。浪人も留年もしなかったけど、来年11月には27歳になってしまう。この年齢で定職がなく、いつ受かるか分からない試験に挑み続けるのはリスクが大き過ぎる」
27歳にもなっては新卒扱いで就職するのは不可能。実務経験が何もないのだから第二新卒というのも無理だ。仕事をするための資格も持っていない。このうえ年齢が高くなってしまったらもうドン詰まりだと思う。
「ハローワーク、ヤングハローワーク、ジョブフェアなどに通うか、簿記会計や情報処理、宅建士といった資格を取る。あるいは職業訓練を受けないと将来困ることになる。自分できっちり考えてもらわないと」
長男にこれだけヤキモキさせられているのに、今度は次男が一言の相談もなく会社を辞めていたことが発覚した。
