「いまや誰もがインターネットの中を生き、アルゴリズムの影響を受けています。登場人物は世界の未来を案じていますが、それぞれが別の現実を生き、異なる情報を受け取っているせいで互いに触れ合えなくなっている。SNS浸りの生活を送っていなくとも、この問題を避けることはできないと思います」

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 インターネットを題材とする以上、「面白くて残酷、かつ“バカバカしい”映画にしなければいけなかった」とアスターは言う。「情報それ自体よりも、人々の話題や関心が価値となるアテンション・エコノミーの時代では、すべてが数秒で消費されてしまいます。一瞬で興味を惹かれるからこそ、インターネットは面白くて残酷で、“バカバカしい”のです」

集結したハリウッドのトップスターたち

 新たな挑戦を支えたのは、アスター作品史上もっとも豪華なスター俳優たちだ。主人公の保安官ジョー役には、前作『ボーはおそれている』(2023年)でタッグを組んだホアキン・フェニックス。映画製作を通して友人になり、「人としての振れ幅を知った」という。

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ホアキン・フェニックス ©2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

「ホアキンは本当に面白く、優しい人ですが、ダークで激しい面もある。彼ならジョーという役を充実させてくれると確信しましたし、実際の演技にも満足しています。彼は恐ろしくも、また弱々しくもなれる――この映画はいわば“共感のジェットコースター”。ジョーは最初こそ観客に好かれるでしょうが、のちに彼は観客を裏切るような行動に出るのです」

 ジョーの妻ルイーズ役は『哀れなるものたち』(2023年)などのエマ・ストーン。市長テッド役は『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(2025年)や『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024年)など話題作が続くペドロ・パスカルが演じる。

エマ・ストーン ©2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Rserved.

「ホアキンとエマ、ペドロは俳優としてのタイプが違います。ホアキンはたくさん議論し、物事を深く掘り下げるのを好むのが魅力ですが、エマやペドロはリハーサルや議論ではなく、もっと直感的な方法で物事をつかんでいくのです」

ペドロ・パスカル ©2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

 ちなみに、アスターが「ホアキンに近い」と語るのはカルト教祖ヴァーノン役のオースティン・バトラー。「とても丁寧にリサーチし、徹底的に役づくりをするタイプ」だという。「もちろん全員が素晴らしい役者で、しかもすごく良い人たちです」

オースティン・バトラー ©2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.