アリ・アスター作品と音楽
『ヘレディタリー/継承』のジュディ・コリンズ、『ボーはおそれている』のマライア・キャリーなど、アスター作品では意外な形でポップスターの楽曲が使用されるのも特徴だ。本作『エディントンへようこそ』でも、とある有名楽曲が絶妙な効果をもたらす。
「映画に使うのは大好きな曲ばかり。特に『ボーはおそれている』のマライア・キャリー(“Always By My Baby”)はお気に入りです」と笑顔を浮かべるアスター。「選曲のほとんどは僕なりのユーモア。僕が聴いている曲を登場人物にも聴いてもらうような感じ」
もっとも、アスターは有名楽曲を映画のなかで素直に聴かせることはしない。まるで、劇中の事件を相対化したり、違和感を与えたりするために音楽を利用しているかのようだ。
「その意図もあります。本来は噛み合わないものを並置すると、そこに化学反応が起こる――とにかく、僕は物事をわかりやすくしたくないのです。音楽がスクリーンの出来事をより複雑にしてくれるなら、それはとても素晴らしいこと」
『エディントンへようこそ』を送り出したアスターは、すでに新たなプロジェクトに着手しているという。どうやら次回作も、再び“SNS”が作品のキーワードとなるようだ。
「SNSアカウントは持っていますが、基本的に投稿はせず見ているだけです。本作の脚本を書いているときはSNSをよく見ていました。今も新作のためにSNSを注視し、どのような変化が起きているのかをチェックしているんです」
『エディントンへようこそ』
監督・脚本:アリ・アスター/出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー、ルーク・グライムス、ディードル・オコンネル、マイケル・ウォード/2025年/アメリカ/148分/配給:ハピネットファントム・スタジオ/© 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved./12月12日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

