注目された「日本人ファースト」にしても、参院選後に神谷は「移民上限は人口の10%まで」と発言している(後に5%以下に訂正)。2024年末の在留外国人が約3%であることを鑑みると、まだ受け入れ幅があるということになる。

 実務経験も乏しく、政策も具体性がないとなれば政党として伸びる条件を欠いているようにも思える。だが、彼らは第三極としての立ち位置を得た。

グローバリズムを明確な「敵」と設定

 それはポピュリズムが説得力を持つ地盤が日本においても整ったことを意味している、というのが彼らを取材してきた私の仮説だ。ポピュリズムとは、単に大衆に心地よい政策を訴える「大衆迎合主義」ではない。オランダの政治学者カス・ミュデの定義を提示しておこう。

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《社会が究極的に『汚れなき人民』対『腐敗したエリート』という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー》(『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』白水社、2018年)

 ポイントはエリート層が推し進める政策、たとえばグローバリズムを明確な「敵」と設定して、「中心の薄弱」な主張と結びつくところにある。ポピュリズム政党に体系的かつ理論的な主張はない。よく言えば柔軟ではあるが、悪く言えば節操のない主張で体制を揺さぶる。

 これは右派だけでなく左派――日本なられいわ新選組――とも結びつく。参政党とれいわには外国人を含む人権問題では大きな差があるが、エリートが重要な地位を占める既成政党や体制への不信を訴えること、大胆な財政出動といった共通点も多くある。反グローバリズムを唱えるポピュリズム政党は右派、左派ともに国境を超えて、むしろグローバルに広がっている。神谷はドイツ最大野党で極右と位置付けられる「ドイツのための選択肢(AfD)」の共同代表と会談し、さらに凶弾に倒れたアメリカの若き保守活動家チャーリー・カークを招いたイベントを開催するなどネットワーク作りにも熱心に取り組む。