地球の反対側まで届く戦略ミサイルを…

 イギリスはどうか。イギリスは4隻の「ヴァンガード級戦略弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)」を運用している。1隻あたり、最大射程約1万2000kmとされるアメリカ製の潜水艦発射弾道ミサイル(トライデントⅡD5)を最大16発搭載可能で、ミサイル1発に最大8個のイギリス製の核弾頭である個別誘導再突入体(MIRV)を搭載する。また、ヴァンガード級に代わる新型の「ドレッドノート級ミサイル原子力潜水艦」を2030年代はじめに就役させる予定だ。

 ヴァンガード級原潜は、海中から戦略核ミサイルを発射する"見せない核抑止"にあたるが、イギリスも“見せる核抑止”に踏み込む。2025年6月、新たにF-35A戦闘機12機を導入し、NATOの核・非核両用機による核任務に参加すると表明した。

 そして、2025年7月10日、マクロン大統領とイギリスのスターマー首相は会談後に「英国と仏国の防衛および安全保障協力の近代化に関する宣言」を発表した。そのなかで、フランス共和国大統領府とイギリス内閣府が主導する「英仏核運用グループ」を設立することが明記されている。すなわち、イギリスとフランスの2カ国が、地球の反対側まで届く戦略ミサイルを搭載するミサイル原潜を合計8隻、戦術核搭載能力のある作戦機100機以上の運用を調整することになるのだ。

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プーチン氏の新たな戦略

 いっぽう、ロシアのプーチン氏は、本稿の冒頭で触れたように「新START」の事実上1年間の延長を提案した。「この措置は、米国が追随し、既存の抑止力のバランスを損なったり、混乱させない場合にのみ有効だ」というプーチン氏の発言は、イギリスとフランスの核運用グループという新たなプレーヤーの登場前に、アメリカとの関係を整理しておきたい、ということなのかもしれない。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。

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