「処女」に取り憑かれ、虚構の被害者像をでっち上げた夫と、それに同調した妻。12人殺害の末、裁きはどう下ったのか。凶悪なフランス人夫婦を待っていた衝撃の結末と、その後の人生を追う。文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より、その後の顛末を一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
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すべてが作り話
2006年1月、ミシェルとモニクの身柄はフランスに移される。ここで行われた尋問で、ミシェルが自己中心的で、良心の呵責を感じていないこと、被害者や遺族に対して何の関心も持っていないことなどが判明。また、この過程で彼は捜査官に対し「処女の女性と結婚したことがないのが、自分の生活の中で最も絶望的な部分だ」と改めて処女に対する自身の強迫観念を主張する。が、その考えを理解できる者は誰もいなかった。
裁判は、2008年3月27日から5月28日まで開かれた。ミシェルは黙秘権を行使したが、証人として出廷した彼の兄アンドレが衝撃的な事実を明らかにする。
ミシェルが子供のころに母から受けたという性的虐待や父親のアルコール依存症、学校での盗みは全て弟の作り話だというのだ。つまり、ミシェルには後に残虐な殺人を行う背景となったと考えられていた幼少期のトラウマなど一切なかったのである。兄によれば、ミシェルの虚言癖は、それこそ幼年期から始まったという。
