2018年上半期、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。オピニオン部門の第2位は、こちら!(初公開日:2018年5月22日)。
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鮮やかなピンクのネクタイが、カメラのフラッシュを浴びて光っていた。このシーンだけを見れば、この男性がこれから謝罪するとは到底思えないだろう。
アメリカンフットボールの定期戦で、日本大学の選手が関西学院大学の選手に対し、重大な反則行為をして負傷させた問題で、渦中の内田正人監督がようやく公に姿を見せた。ところがこの会見、謝罪したものの、まるで誠意が感じられないと批判が噴出。
「自分ファースト」の姿勢が見え隠れ
先日行われた関西学院大の会見でも、鳥内秀晃監督が日大からの回答書について「疑問や疑念を解消できておらず、現時点では誠意ある対応とは判断しかねる」と、怒りを露わに不満を示したばかりだ。そんな鳥内監督や負傷した選手やその保護者を前に、ピンクのネクタイで頭を下げた姿を想像すると、それが誠意ある謝罪だったのかと首を傾げたくなってしまう。
内田監督としては謝罪だけでなく辞任を表明し、騒動に区切りをつけたかったのだろうが、結果はその思惑とは反対に向かっている。謝罪会見としては失敗である。その理由は、内田監督の「自分ファースト」の姿勢が見え隠れしたからだろう。
ピンクのネクタイが、最もそれを物語っている。内田監督がピンクを選んでしまった心理を推測すると、おそらく日大がスポーツ競技で使用している色だからだろう。日大のスクールカラーは「緋」色だが、箱根駅伝に初参加した際、赤を使用する他大学と混同しないため、ピンクを使用したのが始まりとされている。内田監督も公式行事の際などで、このピンクをネクタイの色に使っているようだ。だから日大アメフト部監督という立場として、無意識のうちにかもしれないが、ピンクのネクタイを締めたのだろう。
誰一人としておかしいと思わなかったのか
だがそこには、相手がそれを見てどう思うか、どう感じるかという相手目線がまるでなかったことがわかる。相手側の怒りも心情もまるで眼中になく、日大監督という自分の立場をピンクで強調したという印象でしかない。
このような謝罪の場にピンクはありえない。さらに言えば、一緒に謝罪に同行していた幹部らは、誰もこのネクタイに異を唱えなかったということだろう。同行した誰一人としておかしいと思わなかったのか、それとも誰も内田監督におかしいと言えなかったのか。内田監督の言動ありきでそれに従い、反論できない組織や環境が、問題の根底にあったことが、ピンクのネクタイから想像されるのではないだろうか。
結果、情報の受け手には場違いな印象を与えることになってしまった。