免疫療法が効かないがんも

 本庶 もともとはT細胞を活性化すると、どんな遺伝子が働くのかを網羅的に調べていたんです。その過程で最も強く反応したのがPD-1だった。でも、最初はこれがどういう働きをしているかわからなかった。そこでPD-1をノックアウトした(破壊した)マウスに何が起こるのかを観察したところ、「何も起きなかった」んです。これにはガッカリしましたが、諦めずにいろんな実験を続けました。すると、実は半年ぐらい経つと、PD-1を破壊したマウスが自己免疫疾患を起こすことを発見できたんですね。

本庶佑さん(本人提供)

 成田 ブレーキが取り除かれて免疫が暴走するわけですね。

 本庶 そうです。その暴走がマイルドに起こるので、発症が半年後になった。この結果は薬にしたときに副作用が軽いことを意味します。「これは使えるぞ」と思いました。

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 成田 その段階で免疫療法がここまで浸透すると予想されました?

 本庶 はい。ただ、まだ免疫療法が効かないがんもあるんです。例えば、すい臓がんですね。

 成田 すい臓がんにはなぜ効きにくいんでしょうか?

成田悠輔氏 Ⓒ文藝春秋

 本庶 現状では「免疫細胞が臓器の中に入れない」ことが大きな問題なんです。すい臓がんの場合、がん細胞の周囲に繊維質が大量に増殖するので、物理的に入っていけないんですね。そこが解決できれば何とかなると思います。

 成田 逆に免疫療法が効きやすいがんというと……。

 本庶 一番効きやすいのは、メラノーマといわれる皮膚がんですね。これは非常に効きます。それから消化器がん、喉頭・咽頭の上皮がんですね。

 成田 免疫療法が効きやすいがんと効きにくいがんの違いは何から生まれているのでしょうかね。

 本庶 一般的に考えられるのは、T細胞が異物を認識するマーカー(がん細胞の表面にある異常なタンパク質や変異の痕跡)がどれだけよく見えるかの違いですね。

 成田 T細胞が異物として認識しやすい姿形のがん細胞とそうでないがん細胞があるということですね。

 本庶 そうです。他にも、免疫細胞や薬が臓器へ到達しやすいか。あるいは、がん種による変異の度合いがどのぐらいか。違いを生む要因はいっぱいある。さらに問題なのは、患者の個人差が大きいんですね。

※本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(本庶佑×成田悠輔「作文上手な人、文科省に挨拶回りする人が予算を取っている」)。全文では下記の内容をご覧いただけます。
・日本は“社会主義の国”
・お釈迦さんはすごい
・「選択と集中」は間違い

出典元

文藝春秋

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