経済学者・成田悠輔氏がゲストと「聞かれちゃいけない話」をする対談連載。第9回目のゲストは、本庶佑さんです(構成・伊藤秀倫)。

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がん治療を一変させた発見

 成田 がん治療は今後どう進化すると見立てていらっしゃいますか?

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 本庶 現在一番有効なのは免疫療法ですよね。これはまだ進歩すると思います。今は治らないがんも治るようにできる可能性はある。

本庶佑さん

 成田 がん治療の景色を一新した免疫療法の基礎を作ったのが、まさに2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶さんのご研究ですね。「免疫抑制の負の制御を阻害することによるがん治療の発見」をど素人なりに理解したところでは、まず私たちの体には、体内に入った異物(がん細胞)を攻撃する免疫細胞(T細胞)がある。ただ、免疫細胞は暴走すると自分自身を攻撃してしまう(自己免疫疾患)。だから暴走を止めるブレーキ(免疫チェックポイント)が備わっている、と。

 本庶 そうです。

 成田 先生はまず、そのブレーキにスイッチを入れる「PD-1」という分子が存在することを1992年に発見された。そしてがん細胞がこのPD-1を悪用し、がん細胞への免疫細胞の攻撃を止めていることを見つけた。そこで、そのブレーキを解除する薬(免疫チェックポイント阻害薬)を開発され、がんの免疫療法の起爆剤になった。そんな理解でよろしいでしょうか。

成田悠輔氏 Ⓒ文藝春秋

 本庶 結構だと思います。

 成田 ホッとしました(笑)。ご自身の研究が、ここまで巨大なインパクトをもたらすと確信された瞬間はいつでしたでしょうか。