「大変というより、いら立たされることがある、と言った方がいいかしら(笑)。確かにヨルゴスの映画は難しい。ヨルゴス自身も撮影を開始した時点では、最終的に自分が何を求めているのか不明確なの。にもかかわらず細部まで気を配り、それに対してキャストやスタッフ誰もが積極的に参加する。撮影現場では一体感が強く、空回りしているような瞬間がない。キャラクターも様々な観点から解釈するというような回りくどさはなくって、最初からしっかりと焦点が定まっている。だからそのキャラクター像にぴったりの演技ができると、これだ!! と自分で気が付くわけ。問題は、それに彼が気付かないことがあって、そういう場合にこちらがいらいらして大惨事になる(笑)。まあでも、自分が非常に信頼されていて、自由が与えられている、安全だと感じるヨルゴスの撮影環境はとても居心地がいいわ」
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の「赤いサングラスの男」役でも強烈な印象を放ったジェシー・プレモンスも言う。
「ヨルゴスの作品の最たる特徴は、まず脚本が非常に特異な内容である点。また抽象的でありながらも人間的であるという点かな。観客に対しても、物語を自力で解釈することを要求してくる。彼は自分の解釈を他者におしつけず、観客が彼の創り出した世界に足を踏み入れ、そこで何かを見つけてくれることを想定している。そんな答えのない世界で仕事をすることにキャストもスタッフも次第に慣れ、全員が同じレベルで探求し続けると、一緒に様々な発見をすることになるんだ」
誰もがみんな陰謀論者
エマ・ストーンはロマンティック・コメディを多くこなしてきたが、近年は演技の境界線に挑戦するようなきわどい演技も堂々こなす。監督と波長がぴったり合った感じなのだ。
「ヨルゴスとの付き合いは10年以上になるかしら。2人とも同じようなテーマ、物語や世界に惹かれるのだと思う。彼に会う前に見た彼の作品は『籠の中の乙女』(2009年)だけで、『ロブスター』(2015年)はまだ公開されていなかった。もちろん私は『籠の中の乙女』を気に入っていて、彼と実際に会ってすぐに意気投合し、信頼できる人だと感じた。それで『女王陛下のお気に入り』を一緒に製作して、以後共作が続くことになったの」

