本作の核には、陰謀論とは何か? 陰謀論とはいかにして生まれるか? といった問いかけがある。SNSやAIが日常に深く浸透し、真実と偽りの境界線が曖昧になる現代において、これは興味の尽きない大きな課題だ。

 これについてプレモンスは、

「僕の意見としては、誰もが陰謀論者だと言える。僕らは全員無意識に様々な陰謀論から影響を受けている。例えば“これを買え、これが必要だ、買え!”と常に言われている。僕が演じたテディは極端なケースだけど、だれもが陰謀論に何らかの形で関わっていると思う」

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映画『ブゴニア』

不幸にも世界がこの映画に近づいてきた

 ランティモス監督も、

「製作中は特定の陰謀論に感化されて作品に影響が出てはこまるから、陰謀論に関する情報には距離を置いた。映画の完成後に、調べてみると、実際にあるエイリアンの陰謀論には興味が湧いたよ。アメリカ政府が裏で何かやっているとか、時には現実に起こったこと、真実も含まれている。現在は真実と嘘の違いを見抜くのが難しくなった。何かを信じるためには、とても沢山のリサーチが必要となる」

映画『ブゴニア』

 ランティモス作は、常に社会的、政治的な意味合いを含み、現在の社会のありかたについて揶揄する色彩が濃いという点で一貫している。観客に、現代社会についての自分自身の意見を求めてくるのだ。

 ランティモス監督は言う。

「常にそれを心がけてきた。時には直截的に問いかける場合もあるし、時にはかなり曖昧に問いかける場合もある。自分で回答を見出してもらうような形というのかな。明確に説明することなく観客に問いかけるというのが僕の映画の意図であるから。その問いかけは自然についてであったり、僕らの社会についてであったり、政情についてであったり、世界についてであったり、テーマは多様だ。『ブゴニア』は、僕の他の作品に比べれば、より明確な問いかけをしていると言える。このテーマは数年前に制作を開始してから、日々身近な問題になってきた。それは不幸な偶然だったと言える。世界の状況は以前にも増して、この映画の内容と強いかかわりが出てきたように見えるね」

映画『ブゴニア』

『ブゴニア』
 

映画『ブゴニア』

監督:ヨルゴス・ランティモス/出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス/2025年/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ/118分/配給:ギャガ ユニバーサル映画/©2025 FOCUS FEATURES LLC./2月13日(金)ロードショー

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