「お前の会社なんかいらねーよ」

 会社の求心力低下を感じていた藤田氏は、自分の持ち株のかなりの部分をサイバーの幹部社員に渡した。このため2000年末時点でサイバーの持ち株比率は藤田氏22.6%、熊谷正寿氏率いるGMOインターネット21.4%、宇野康秀氏率いる有線ブロードネットワークス13.2%、村上ファンド10%。村上ファンドが熊谷氏か宇野氏のどちらかと手を組めば、筆頭株主になってサイバーは事実上、乗っ取られる。

U-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEOの宇野康秀氏(当時の社名は有線ブロードネットワークス) ©文藝春秋

 しばらくすると熊谷氏が「ウチと一緒にやらないか」と買収を持ちかけてきた。背後に村上氏の存在を感じた藤田氏は、起業する前に勤めていた会社(人材派遣のインテリジェンス=現パーソルキャリア)の創業者である宇野氏に「サイバーを買って欲しい」と頼み込む。だが宇野氏に「お前の会社なんかいらねーよ」と突き放され、「もはやここまで」と観念する。

 実は「いらねーよ」は宇野氏流の激励だった。藤田氏はダメもとで一度しか会ったことのない三木谷氏の元を訪れるが、宇野氏はそれを見越し、近しい人物を通じて「藤田を助けてやってくれ」と三木谷氏にサインを送っていたのだ。三木谷氏を訪ねた藤田氏は必死にアピールした。

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楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が、危機に瀕していたサイバーエージェントを救った ©文藝春秋

「これからECとネット広告は成長するので、楽天とサイバーには大きなシナジー効果が生まれると思います」

 三木谷氏は言った。

「話は聞いてる。出資するよ」

 2001年、楽天はサイバー株を約10億円分買い、10%の大株主に収まった。なぜサイバーに手を差し伸べたのか。三木谷氏は当時こう語っている。

「ベンチャーが叩かれているんだから、助けないとね」

 楽天というホワイトナイトが現れたことで、熊谷氏は買収提案を取り下げ、村上氏からの圧力も無くなった。

この続きでは、ライブドアの近鉄買収などプロ野球とネットベンチャーにまつわるエピソードを解説しています〉

※本記事の全文(約8200字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年2月号に掲載されています(大西康之「日本のネットベンチャー30年の興亡」)。「文藝春秋PLUS」では、下記の関連記事もご覧いただけます。

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出典元

文藝春秋

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