サイバーエージェント創業者で、2025年12月に社長を退いたばかりの藤田晋会長(52)。新刊『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋)は発売直後から話題沸騰で、電子書籍も含めた累計発行部数は早くも9万部を突破した。

『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(藤田晋/文藝春秋)。新社長の条件や若者マネジメントの極意、トンガった企画の生み出し方など、52本に及ぶ「ビジネスの最強鉄則」を明かしている

 経営のみならず、麻雀も財界屈指の腕前と知られる藤田氏。『勝負眼』の中で「今まで麻雀を打ったことのある経営者や著名人で一番強いと思った」「お世辞など一切効かない雰囲気」と綴っているのが、ドン・キホーテ(現PPIHグループ)の安田隆夫創業会長だ。同社を売上高2兆円の巨大企業に育て上げ、2024年7月に出版した『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』(文春新書)はベストセラーとなっている。

 そんな藤田氏と安田氏は、実は「週刊文春」(2024年10月17日号)誌上で対談していた。日本を代表するトップ創業者2人が語り合った対談の一部を抜粋して配信する(全文は「週刊文春 電子版」で公開中)。

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サイバーエージェントの藤田晋会長(左。取材時は社長)と、PPIHグループ(旧ドンキホーテHD)の安田創業会長兼最高顧問  ©文藝春秋

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遊びの麻雀と思ってやっているヤツは勝てません

安田 今でも覚えているのは、私があまりに気合いを入れて打つものだから、藤田さんが「なんでそんなに麻雀に気合を入れてるんだ」と、一瞬ビックリしたような目で私を見ていたことです。そうでしょう?

藤田 いつも思っていました。ギロッ、ギロッと見てきます。僕は麻雀の牌より人の顔や空気を見ているので、目が合いましたよね。

安田 相手の顔をじっと見ていると、場の流れを感じ取れますから。そろそろテンパイが近いな、結構手が高いな――とか。その情報を頭の中で瞬時に判断していくわけで。

藤田 麻雀に強い人って結局はそういう人。「必ず勝つ」という気迫みたいなものが勝利を呼び寄せる。遊びの麻雀と思ってやっているヤツは勝てません。

安田 私も対局をしながら、「この人は私と似ているな」と思っていました。気迫という意味では、藤田さんも全く負けていない。

藤田 僕も負けず嫌いですから。

安田 たぶん日本で2人だけですよね、“雀ゴロ”出身の大企業の経営者は。

©文藝春秋

なぜなら、「運」とは結果ではなく原因だから

――安田さんは先日、『運』(文春新書)を出版されました。この本では、安田さんが会社を成長させる中で、「運」をどうコントロールし、困難な状況を切り開いてきたかが詳しく描かれています。麻雀と経営の共通点についても、多くのページが割かれていますね。

藤田 本を読んでいて、「この考え方は一緒だ」と何度も思いました。

安田 共感するところがいっぱいあったでしょう?

藤田 はい。「運」って本当は大事なものなのに、多くの人はそれに向かい合おうとしない。「運は運だから」みたいになってしまっているでしょう。でも、それでは勝てない。