前日の日本記者クラブ討論会では、「(国民会議で)夏までに結論が出れば、臨時国会に法案を提出できる」「できれば26年度内を目指したい」と前のめりだっただけに、公示日の沈黙は余計に目立った。

 立場の使い分けも目につく。首相としては「年度内を目指す」と語る一方、党総裁としては「国民会議で決める」と慎重姿勢を強調する。毎日新聞は「消費減税、ぶれる首相」と報じ、日経新聞は「首相と党総裁の立場を使い分けるのは問題だ」と社説で批判した。

福島で「(政権は)不安定だ」と解散の本音を…

 この“二人の高市首相”を見て思い出したのが、矢沢永吉の名言だ。「俺はいいけど、YAZAWAが何て言うかな?」である。ただ、高市首相の場合、首相と総裁を使い分ける姿は、理想の姿を求めたゆえの客観視というより、責任の置き場所をずらしているだけのようにも見える。

ADVERTISEMENT

 まだある。民放番組では、これまで消費税減税のために「1年かかる」としていたレジのシステム改修について、「細かく聞けば半年でも可能」と主張を変えた。

 この二転三転は何なのだろう。1998年の参院選で、当時の橋本龍太郎首相の減税発言がブレ、自民党の失速につながったことがある。選挙前後の消費税減税をめぐる高市首相の言動も、やはり謎なのだ。

 実は今回の選挙は、国会での議論を避けたい心理の裏返しではないか。そう感じさせる場面が、公示日(第一声)の演説にあった。

 福島で、高市首相は「(政権は)不安定だ。はっきり言って行き詰まっている」と語った。重要な委員会の委員長を野党が握り、法案審議が進まない。これが解散の本音なのだろう。

「私の新しい内閣の政策を反映した予算や法律の審議が始まる前に(信を)問うてみなければ、だましだまし『首相にいさせてください』と言っているようなものだ」とも発言している。

 ここで思い出すことがある。高市首相の前任である石破首相は、少数与党だからこそ熟議が必要だと語っていた。結果はさておき、「国会で話し合う」と宣言していた。しかし高市首相の言葉からは、「国会で話し合う」という姿勢が、どうにも見えてこない。