俳優でパーカッションバンド・BON-BON BLANCOのボーカルとしても活躍してきた美馬アンナさん。2019年に誕生した長男・リタさんは「先天性四肢欠損症」で、生まれつき右手がない。出産直後は「泣いてばかりいた」というアンナさんだが、息子を育てる中で、自分自身の偏見や世間からの過剰な反応と向き合い、乗り越えてきた。

2019年に、先天性四肢欠損症の長男・リタさんを出産した美馬アンナさん(左)。夫は元プロ野球選手の美馬学さんだ(写真=本人提供)

 

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「あ、うちの子は障害者なんだ」 周囲の偏見だけでなく、自らの行いにも落ち込む日々

 リタさんの障害について、アンナさんは出産までまったく知らなかった。「先生から病名を言われた時も、『センテンセイ…シシ…"シシ"って何のこと?』という状態でした」と話す。入院中にスマホで必死に情報を集める毎日を過ごし、どのページにも「障害」と書いてあり、「あ、うちの子は障害者なんだ」「普通とは違うんだ」とあらためて認識したという。

 小学校時代は特別支援学級の子とも仲がよく、「障害とか肌の色とか言語の違いで差別するようなヤツがいたら、『お前、マジ気持ち悪いから』とかって怒るようなタイプだった」というアンナさん。

「なのに息子の障害がわかった途端、それを隠そうとしている自分について『本当に気持ち悪っ』と思った」と当時を振り返る。公園から帰る度に、玄関で泣きながら「ごめんね、本当にごめんね」と息子に謝っていた時期もあった。

 世間からの過剰な反応にも苦しめられた。「なんで手がないの? なんで? なんで?」とズケズケ言ってくる人や、「本当にかわいそうね」と繰り返す女性に絡まれたこともある。

リタさんを育てる中で、自らを責める場面も少なくなかったという

夫・学さんの言葉が、つらい時期の支えになった

 そんなアンナさんを支えてきたのが、夫であり、元プロ野球選手(現千葉ロッテマリーンズコーチ)の学さんだ。

 リタさんを出産した際、パニックになってしまったというアンナさんのそばに寄り添い続け、励ましてくれた。当時、リタさんの状況を「産む前に分かってたらよかったのに」と言ったアンナさんに対して、学さんが返した言葉を今でも覚えているという。

「『産む前から分かってたら、リタを産まなかったの?』と聞き返されました。私、それで言葉に詰まってしまったんです。

 黙っていたら、『俺は右手のことが分かっていたとしても、アンちゃんに生んでほしいと頼んでいたよ。俺にとっては、覚悟できていたか、覚悟できていなかったか、それくらいの差でしかない。それに、俺はこの子が俺とアンちゃんの間に生まれてきて良かったと、幸せにしてあげられる自信がある』と話してくれて。

 産後にちゃんと彼と話したのって本当にそれぐらいなんですけど、その言葉を聞いて気持ちが軽くなったんですよね」

 出産から6年が経ち、アンナさんは「本当に強くなった」として「今はもう、『どう思われたってかまいませ~ん』って感じです」と話す。リタさん自身も、自分の障害について3歳頃から理解し、友だちから「おててどうしたの?」と聞かれた時には自分で説明できるように成長してきた。

「必死に社会に対応しようとしている彼を見ると、本当に愛おしい」。周囲の偏見を乗り越えて、アンナさん親子は前を向いて歩んでいる。


 出産に30時間もかかり、生まれた瞬間にアンナさんが「手はどうなってるの?」とパニックになってしまっただけでなく、リタさんがどこかに連れていかれてしまったという当時のエピソードや、夫・学さんとの出会いなど、インタビュー全文は下記からお読みいただけます。

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