国立西洋美術館には、いつでも会えるモネが
常設展の質量で抜きん出ているのは、東京上野の国立西洋美術館だ。「松方コレクション」と呼ばれる日本屈指の西洋美術コレクションをもとにして、補強を重ねてきたのが同館収蔵品。広大な常設展示スペースで、それらを惜しげなく観せてくれる。
時代順に整然と展示がなされているので、ひと巡りするだけで西洋絵画史が丸ごと頭に入る感覚があって、お得な気分になれる。
14世紀に描かれた《聖ミカエルと龍》にはじまり、ルーベンス、クールベ、マネら時代を画する大家の絵が続き、ピークは印象派の巨匠モネの作品を集めた部屋。ここにはモネの代表作たる《睡蓮》の優品が堂々と飾られている。
さらには、ゴーガン、セザンヌ、ゴッホ、ピカソの作品までが一挙に味わえる。ふらり立ち寄れば西洋美術の粋に出合える、とっておきの場所としてぜひ覚えておきたい。
あらゆる面で「お得」な常設展
展示の充実度で負けないだけじゃない。常設展示は、大々的に開かれている企画展よりも、観覧条件がはるかに優れている。
まずは価格がリーズナブル。引き続き国立西洋美術館を例にとれば、いま企画展として開催中の「ミケランジェロと理想の身体」展は、料金が1600円。常設展示だけなら、これが500円だ。ルーベンスもマネもモネもピカソも観られて500円とは、コスパ抜群ではないか。
そして何より、常設展はたいてい空いている。人気の企画展はときに、会場内が立錐の余地もないほど混雑してしまう。入館するまでに行列なんてこともザラ。常設展なら、誰にも邪魔されず名作と、それこそ一対一になって時間を過ごすことだってできる。
何かを鑑賞するかたちとしてどちらが正しいのかは明らか。ぜひ常設展示室で、濃密な時間を過ごされたい。