その時、タレントで起業家のくりえみさんはサンフランシスコに向かう飛行機の中にいた。異変が起きたのは離陸してからおよそ5時間後、「プツン」という謎の音が聞こえたことが始まりだった。

「最初は背中あたりから痛くなって、だんだんと上半身あたりにも痛みが広がっていきました。『なんだか痛いな』と思って、背中を触ってみると手がべしゃーっと濡れたんです」

 くりえみさんの体に一体何が起きていたのか。「もう死にたい」と思うほど追い詰められたという壮絶な体験について、ライターの徳重龍徳氏が聞いた。

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くりえみさん ©山元茂樹/文藝春秋

周りが気づくくらいにびしゃびしゃに濡れた

 突然自分の体が濡れていることに気づき、くりえみさんは戸惑った。「あれっ、濡れた服を着てきちゃったのかな?」まだ背中の痛みは耐えられる程度だったため、服を濡らしているのが、自分の体液だとは気づかなかった。しかし、事態はどんどんと悪化していく。

「フライトから10時間ぐらい経った時に『体液は自分の体から出ているんだ」と気付いて。体から出る体液が止まらず、長袖を着ていたんですが、周りが気づくくらいにびしゃびしゃに濡れてしまって」

 2024年、フライトの約2か月前にくりえみさんはある手術を受けていた。背中にあったしこりを取るのが目的だったが、施術後は特に違和感もなく「綺麗になった」と思っていたという。「プツン」という異音は、この傷跡が開いた音だったのだ。

©山元茂樹/文藝春秋

「サンフランシスコではすでに仕事などの予定をたくさん入れていたし、現地で合流する人にも迷惑をかけたくない。予定をこなしたいという意地が出ちゃって『薬局で痛み止めを飲めば大丈夫でしょう』と結局、サンフランシスコまで痛みに耐えました」

サンフランシスコで体が壊死寸前の状態に

 アメリカに到着してすぐに薬局へ向かったが、日本とは勝手が違うこともあり、何を買えばいいかわからなかった。くりえみさんは痛み止めを大量に買い込み、傷口をテープでぐるぐる巻きにした。この判断が、後々の悲劇に繋がってしまう。

 サンフランシスコでの予定を必死でこなすくりえみさんだったが、ひどい痛みのために眠れなくなった。手術を担当した日本の医師にオンラインで診療してもらい、一時は「たいしたことないのかな」と安心したが、翌日には上半身の皮膚が紫に変色してしまったという。

「後でわかるんですが、その時、私の体は壊死寸前になっていたみたいです。もう歩くのも難しくて『これはまずい』と自覚した時には気絶寸前というくらい意識が朦朧としていて。痛みとめまいに加えて40度くらいの高熱も出ていました」

 一刻も早く病院に行きたかったが、現地の知人に「アメリカで手術をすると数千万円かかる可能性もある」と言われ、日本に帰ることを決意した。しかし、くりえみさんの体はすでに限界に達していた。トランジット先の空港で倒れてしまい、ANAのキャビンアテンダントに発見されたという。

©山元茂樹/文藝春秋

「ANAのCAさんがすごすぎました。10時間以上のフライト中、5~6人の方が交代しながら私の傷口をタオルでずっと押さえ続けてくれたり、汗も拭き続けてくれました。ビジネスが満席だったんですが、横になれるような席も確保してくれて。ANAのCAさんには本当に感謝しています。日本に着くとすぐに救急車で病院に運ばれました」

<つづく>

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