日本郵便と国内大手航空会社という安定した職場を捨て、ハイエースで日本一周の車中泊生活を送るキンゴツさん(48)とアキさん(45)夫婦。

 2023年3月に早期退職し、現在はYouTubeチャンネル「わたりどり とんだ」で登録者数8万人を超えを誇る。安定を手放してまで選んだ新たな生活の背景には、5年間にわたる不妊治療の終了があった――。

「わたりどり とんだ」のキンゴツさん(右)とアキさん(写真=本人提供)

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「将来子どもがいないのであれば、安定した仕事をしている必要もない」

 アキさんは当時を振り返る。

「43歳を迎えて治療をやめることにしたので、もう仕事を続ける必要はないと思ったんですよね。治療費もかからなくなるし、将来子どもがいないのであれば、安定した仕事をしている必要もないのかなと」

 38歳から43歳まで続けた不妊治療は、仕事との両立が困難を極めた。「通院回数がどうしても増えるので、勤務の調整が必要になってくるんですけど、上司から理解を得られないこともあったりして。結構きつい5年間でした」とアキさんは語る。

アキさんは38歳から43歳までの5年間、不妊治療をしていた

「管理職寄りの仕事があまり好きではなかった」

 車中泊生活を始めた背景には、夫婦それぞれの仕事への葛藤もあった。キンゴツさんは郵便配達の現場仕事に愛着があったものの、人手不足で管理職に押し上げられることに抵抗感を覚えていた。

「役職が上になると管理職寄りの仕事になってしまう。そのポジションがあまり好きではなかったですね」

 決定的だったのは、勤奨退職制度の対象年齢が50歳から45歳に引き下げられたことだった。

「ずっと辞めたいと思っていたので、その知らせが"神のお告げ"のように感じて。上司に『もう辞めます』と伝えて退職しました」

アキさん曰く、キンゴツさんは何でも器用にできるという。動画の編集は独学で学んだそうだ

「『子どもがいなくても楽しい人生を送れる』とYouTubeで伝えたかった」

 現在の車中泊YouTuber生活は決して楽ではない。「1週間のうち2日が撮影日で、あとは全部編集日です。朝から晩まで缶詰め状態で編集するので、時間が溶けますね」とキンゴツさん。月の生活費もガソリン代を含めると20万円を超えることがあり、家に住むのと変わらない。

 それでも続ける理由について、アキさんはこう語る。

「不妊治療で苦しんでる人はたくさんいて、その人たちは『もし子どもができなかったときに、自分はどうなってしまうんだろう』と不安を抱えていると思うんです。そういう人たちに、『子どもがいなくても楽しい人生を送れるんだ』って、YouTubeを通して伝えたかった」

 キンゴツさんは「私たちは子どもがいる人生を想定しながら、人生計画を立てていたんです。でも、子どもができなかった。だったら、『将来こうしたいよね』って自分たちが思ってたことを、15年、20年前倒ししてやってもいいんじゃないか、と話し合いました」と振り返る。

「わたりどり とんだ」のキンゴツさん(左)とアキさん

〈つづく〉

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