1978年に起こった日本初の本格的なパンク・ロックのムーヴメント「東京ロッカーズ」を描いた劇映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が全国で公開中だ。シーンを見守ってきた写真家・地引雄一が刊行した回想録を宮藤官九郎が脚本化、田口トモロヲが監督し、「銀杏BOYZ」の峯田和伸が地引雄一=ユーイチ役で主演を務めた。同じ田口監督、宮藤脚本、峯田主演の『アイデン&ティティ』(03年)に続く「バンドもの」だ。

峯田和伸(右)と若葉竜也 写真=杉山拓也/文藝春秋

演技であることすら越えてしまった

 今回、峯田と共にW主演を務めたのが若葉竜也。「TOKAGE」のヴォーカル「モモ」を演じる。『アイデン~』に強い影響を受けただけに、相当な思い入れをもって挑んだ。劇中で描かれるモモの苦悩や叫びにしばしば自分自身を重ね合わせ、時に演技であることすら越えてしまったという。

若葉 現代の若者たちにも通じるようなフラストレーションや怒りがリアルに描かれてる。これはウソじゃない、と思いました。

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写真=杉山拓也/文藝春秋

 その象徴的なシーンが、「TOKAGE」の新曲を聞いたユーイチが何の気なしに「いい曲だからきっと売れるよ」とモモに話しかける場面。モモは「お前までそんなこと言うのかよ」と気色ばみ、売れるとか売れないとか関係ない、自分のやりたい音楽をやるだけだ、と熱く語る。売らんかなのメジャーのシステムの中で信じるものを貫こうとする当時の若者の純情と苦悩が伝わってくる名場面だ。

若葉 本当はもっと淡々とやるつもりだったんですけど、つい熱がこもって大声になってしまった。自分が今抱えている憂鬱とか葛藤とか鬱憤とか、全部セリフに書いてある。全部叫んでいいんだ、言っていいんだ、と思った。それはもう自分のリアルそのものなんですよね。

台本になかった号泣シーン

 そんな苦悩する若者を演じた若葉に対して、峯田が演じるユーイチはそれを見守る役回りだ。『アイデン』では理想と現実のギャップに悩む若きバンドマンを演じた峯田だが、今回はいわば「受け」の役である。

峯田 『アイデン』の時にトモロヲさんに「峯田くんはバンドマンなんだから、演技と思わなくていいよ」って言われて。普段自分が生活している感じで自然にできればいいのかと。今回も、たとえばユーイチとモモがふたりで話していてモモが涙ぐむシーンがあるんですけど、しゃべってるうちになんとなく二人の気持ちが高揚して。

若葉 台本に「泣く」なんて書いてないし、あんな風になるなんて自分でも思わなかったです。

峯田 今この二人の空気ではこれが自然だし、それは抑え込まなくていい。そういう意味でウソのない演技ができた。音楽でも、本当にいいライヴは、お客さんの歓声とかも気にならないぐらい自分の世界に集中できたとき。今回もそういう演技ができたと思います。

写真=杉山拓也/文藝春秋

 ヴォーカリストとしてはエモーショナルで激しいライヴで知られる峯田にとって、今作での抑えた演技は新境地と言えるだろう。

峯田 感情的になってぶつかってもがいてるモモたちを受け止めるのはすごい新鮮でした。今までやったことない役だったので。