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忖度はどうして「きつい」コミュニケーションなのか?

――研究室で作っている不完全なロボットの「弱さ」、こちらに委ねてくるからこっちも「え? 何、何?」と思わず関与してしまう引力は、調整の余地そのものなんですね。

岡田 半ば相手に委ねつつ、それを支えてもらうことで、一緒になって意味を作るので、こちらにも納得感が生まれるコミュニケーションになるんです。ゴミ箱ロボットだって、ロボットがゴミを入れろと命令しているわけじゃない。人間のほうが「なんか、ゴミを入れてあげようかな」という気持ちにさせられて、ゴミ箱ロボットにゴミを入れる。命令されたわけじゃないから、納得した行動になっている。お互い満足感のあるコミュニケーションの形になっている。それはある意味で、「する・させられる」の一方的な体育会系コミュニケーションとは対極にある関係性の在り方だと思います。

ゴミ箱ロボット「Sociable Trash Box」

――時事的なコミュニケーション問題をもう一つ伺いたいのですが、「忖度」。あれはコミュニケーションの形としては、どうなんでしょう。

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岡田 典型的な一方的なコミュニケーションでしょう。そこに明確な指示はないけれども、下のほうが「こうであるだろう」と目上を慮って何かをする。場合によっては上のほうの「わかってるだろうな」的なメッセージを汲んでの忖度もあるでしょう。相手に半ば解釈を委ねているというより、むしろ一方的に解釈を強いている。それはまさに「調整の余地」を持たない世界、お互い相談の余地のない「きつい」コミュニケーションじゃないかと思います。

「マコのて」

正確さ、誠実さだけじゃ上手くいかない

――今、コミュ障という言葉があるくらいで、誰もがコミュニケーションの仕方に悩みを持つ時代だと思います。岡田さんにもコミュニケーションの悩みはあったりするんでしょうか?

岡田 ありますよ。だって、僕はこの通り、口下手ですから。

――そんなこともないと思いますが、ではどうしてこの研究に携わることになったんでしょう。

岡田 いやこれは冗談でなく、口下手だったことも大きいんですよ。僕は福島県の生まれなんですけど、電話なんかで話していると、ワンテンポ遅れるんですよ、返事が。するとカミさん、まあその頃はまだ彼女でしたけど、明らかにイラついてるんですよね。「もっとハキハキしゃべって。なんで今、1秒間が空くの?」って(笑)。

 

――あはは。

岡田 間を空けるのは、僕としては優しさのつもりなんですよ。その言葉に対して、相手にちゃんと伝えるための言葉を選んでいるんだから。でも、それがイラつくんですねえ。コミュニケーションって、ほんと難しいですよ。正確さ、誠実さだけじゃ上手くいかないんだから。

――まさに「いいコミュニケーション」の姿を研究されている岡田さんも苦戦されている。

岡田 話の上手な人にはずっと憧れてます。以前、関西の職場にいたときの話ですが、みんな吉本新喜劇みたいなんですよ、会話が。「こんなの日常的なの?」って同僚に聞いたら「うん。ボケとツッコミがあるわけ」って言うんだけど、僕なんかどっちがボケでどっちがツッコミかわかんなかった。どうやらボケられているようだけど、さてどうツッコミを入れたらいいのかって悩むくらい。強迫観念ですよ(笑)。そこには10年以上いたのかな。でも、あの話芸はマスターできなかったですね。