『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』(鳥飼茜 著)

 あれ? これは私が書いた本なのか……そんな錯覚を覚えながら本書を一気読みした。著者の鳥飼茜さんは2回の結婚・離婚を経験し、3度目の結婚をしようとするが、名字変更をめぐって理不尽に見舞われる。一方の私は2回の婚約破棄。その後「絶対に結婚する」と思って交際していた人に盛大にフラれた。「法律婚」に至らなかっただけ。もし「結婚」していたら全て「離婚」していただろう。結婚していたら、私の戸籍上の氏は何だったのだろうか。

 鳥飼さんは結婚中、相手の顔色をうかがい、無意識に自分を譲っていたという。結婚下における夫婦の関係の不均衡を、赤裸々に、血まみれになって書き付けている本書にならって、私自身のことも書いてみる。

 1回目の婚約破棄の理由。それは「この人と結婚するなら誰も反対しないだろう」という他者基準で結婚を考えたことだった。

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 2回目の婚約破棄の理由。当時わたしはまだ司法浪人中で、親の庇護のもとに生きていた。大好きだった彼は勤務先の社宅で一緒に暮らそう、好きなだけ勉強すればいいよと言ってくれた。結婚直前に「今結婚したら私は多分一生試験に合格しない」と怖くなった。

 その後交際した彼は私の司法試験合格に不可欠な人だった。彼は私にずっと「結婚」の話をしていた。しかし「婚約破棄を2回もした人と結婚するなんて言うたらおかんに絶対反対されるから、タイミングが大事やねん」と言われ、6年間付き合ったがついに「おかん」を紹介されることはなかった。

 一方、私の母は、私に内緒で彼に会いに行き「結婚しないでほしい。三輪記子のまま司法試験に合格させてほしい」と懇願した。彼が先に司法試験に合格したときに二人の関係が変わることはなかったが、遅れて私が合格すると関係がどんどん悪くなった。「対等」な関係が似合わない二人だった。

 私にとって2回の婚約破棄は、実家からの支配・束縛からの逃走だった。その後の彼(同い年)との関係は師弟関係に近かった。

 彼との別離は私の心身を痛めつけ、急激に痩せた私は酒と煙草と男への依存が復活した。カウンセリングに通った。先生は「彼との問題ではない。親との関係を見直しなさい。親の言葉に束縛されなくていいんだよ。まずはあなた自身が経済的に自立しなさい」と言った。先生のアドバイスは適切だった。鳥飼さんも、自身の育った家庭環境や過去の経験をふまえ、世の女性の多くが自分を大切にすることが不得手だと指摘する。女性が支配されることを当然とする社会で、その「前提」がジェンダー問わず身に染みついてしまっているのだ。

 結婚は「氏」にとどまらず、「支配」関係をまとう。その不均衡な関係性を変え、結婚制度をアップデートすることはできるのか。本書は、この目に見えない巨大な「支配」システムと格闘し続ける鳥飼さんにしか書けない奮闘記だ。

とりかいあかね/1981年生まれ、大阪府出身。漫画家。2004年「別冊フレンドDX Juliet」でデビュー。『おんなのいえ』『サターンリターン』『先生の白い嘘』『地獄のガールフレンド』等。エッセイ集に『漫画みたいな恋ください』。

みわふさこ/1976年生まれ、京都府出身。弁護士。ハラスメント問題や離婚・男女トラブル等のエキスパートとして活動。