さて、ここで一つの思考実験をしてみよう。

 仕手株グループに入るにしても、大きく儲けようとすれば手元の資金、つまりタネ銭が必要になる。「大きく儲けたいが、軍資金がない。でも、確実に儲かることは分かっている…」というジレンマに陥った時、あなたはどういった行動を取るだろうか。手あたり次第所持品を売ってタネ銭を増やすのか、大きな儲けを諦めてつつましく(?)投資を続けるのか。

順風満帆だったはずの未来予想図が狂い始めてしまう

 ここで最も大きく投資額を増やし、最もリスクがある方法がある。タネ銭を証券会社からの借金で増やす、つまり信用取引である。この「投資初心者が手を出してはいけない手段」を、理乃は選んでしまう。

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 冒頭で、仕手株は「ほぼ確実に」儲かる、と記述した。「ほぼ」という言葉を用いたのは、当然のごとく大損害を被るケースがあるからだ。通常の投資と同様、多少のリスクは存在する。本書でも理乃は仕手株グループを襲ったある「事件」によって、順風満帆だったはずの未来予想図が狂い始めてしまう。

 具体的にどのようなケースで仕手株グループが崩壊しうるのかは、ぜひ本書をお読みいただきたい。ただ、どのような理由にせよ信用取引をしている場合、自分の資金以上の取引をしているため、株価が暴落した時のペナルティも高くつくことは確実だ。

 

 一度増えたお金がみるみる溶けていき、マイナスに転じる。その時理乃は、人は何をするのか。

 さらなるお金を欲するのである。損を補填するために別のお金を欲する。たとえ生活に必要なお金であっても、一時的な安心と株価が反発する未来を夢見て、そのお金に手を付けてしまうのだ。そこに生じている矛盾などには気づきもせずに。

 お金というものは、希望や夢をかなえる手段になる。と同時にそれらを内側から蝕み、空っぽな欲望のみを残して、ひたすら自身のみを渇望させる魔力をも備えているのかもしれない。

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