犬の飼い主が5433万円という高額賠償を命じられる事故があった。なぜここまで重い責任が問われたのか。ブックライター・永峰英太郎さんの著書(監修=司法書士・行政書士、速水陶冶)『人はこんなことで破産してしまうのか!』(三笠書房)より、70代男性のエピソードを紹介する――。(第2回)
散歩中の50代女性を襲ったまさかの悲劇
ある夏の夕方、山梨県北杜市の歩道を1人、のんびりと散歩していた50代の女性は、予期せぬ事態に出くわすこととなった。前方から、ちぎれた散歩用のリードを首に巻いた大型犬が、猛烈な勢いで、彼女に向かって走ってくるのが視界に入ってきたのだ。
犬の種類は、攻撃性を持つ犬として知られるジャーマンシェパードであった。昨今、公共の場で犬の放し飼いをしているケースは、ほとんど見かけない。それだけに、その女性は今自分に起こっていることに頭の整理が追い付かず、その場で固まってしまう。その刹那、大型犬が歯をむき出しにして彼女に襲いかかった。
「ギャー!」女性は、阿鼻叫喚の声を発した。あとからわかったことだが、この大型犬は1年前にも、自宅でつながれていた散歩用のリードを引きちぎって脱走し、人を噛む事件を起こしていた。犬は苦痛を与えられると、自分の生命を守るための行動として、本気で噛みつくケースがある。人は手や言葉でコミュニケーションを取ろうとするが、犬は口を使って、意思表示を行うのだ。
飼い主には「相当な注意」が欠けていた
この大型犬は、係留されることに対するストレスが、相当強かったのだろう。それゆえ、自由になった大型犬の興奮は、計り知れないものがあった。女性は、大型犬の勢いに圧倒され、噛まれてその場で転倒した際に頭を強く打ち、1カ月後、不幸にも、脳挫傷などが要因で死亡してしまう。
犬などのペットが引き起こしたトラブルについては、まず刑事責任として、飼い主は「傷害罪」や「器物損壊罪」などを負わされる可能性がある。
