2年後、全国指名手配に

 あくまで“悪党”に過ぎなかった男が“悪魔”に変身するのは、それから2年後の1963年10月、37歳のときだ。

 日本専売公社(現・JT)職員の村田郁夫さん(当時58歳)が多額の現金とタバコ製品を運んでいたことを知り、同月18日、配達を手伝いタバコ畑まで案内すると近づき、運送会社運転手の森五郎さん(同38歳)がハンドルを握るトラックに同乗。

 福岡県京都郡苅田町の山道で車を停め、村田さんを人目のつかない場所に誘い出してハンマーで撲殺し、26万円(現在の貨幣価値で約320万円)の入った財布を盗んだ後、車に戻って森さんを刺殺し、約2キロ離れた峠に車と死体を遺棄した。

ADVERTISEMENT

 福岡県警は、目撃証言などから付近に住む西口彰の犯行と断定。西口を殺人、窃盗などの容疑で全国に指名手配する。

 犯行当日の夜、同棲中の理容師女性と福岡市新柳町のホテルに泊まった西口は翌朝の新聞で、すでに自分が捜査対象になっていることを知った。さらに、ラジオで「警察は、関西方面へ逃亡したとみている」と聴くや九州に留まることを決め、佐賀県の唐津競艇で2日間で21万円を稼いだ。

 10月23日、管轄の行橋署に西口から署名入りの手紙が届く。

〈前略、手配のとおり、自分が専売公社輸送強盗殺人の犯人である。犯行後、情婦と逃げるつもりであったが、前非を悔いて自殺することにした。警察には絶対に捕らえられない。悪しからず。東京にて 西口彰〉

 2日後の25日、香川県警から西口が東京行きのフェリー「瀬戸丸」から投身自殺を図った形跡があるとの連絡が同署に入った。