「ビールの売り子がスタンドから消えた」
警備や当日のチケット、ビール販売のオペレーションの問題など様々な反対意見もあった中で当時の千葉ロッテマリーンズは「せっかくの機会なので新しい事にチャレンジすべき」とのエネルギーが圧倒した。急きょ設定された平日ナイターだけに、いくら値段設定が全席1500円と安くても客足がそこまでは伸びないと読んだ。しかし現実は違った。朝から球場の周りには長蛇の列が出来た。初日が2万5012人。2日目が2万3838人。ビールは通常の5倍売れた。売り子もスタンドに出る前のコンコースでお客から注文を受けビールの樽は空っぽになる状態となった。そこで起きた現象がスタンドには売り子が全くいない状態。「ビール半額デーにビールの売り子がスタンドから消えた」として今も語り継がれている。
「いつもは外野で見ていた人が内野で見たりと新しいものを提供することが出来た。お客さんもいつもは野球ファンだけで来るところを、ビールも半額だし花火も見れるからと野球ファン以外の人も連れて来てくれた。逆境の中、なにかいいアイデアはないかという逆転の発想で取り組んだ結果の成功。あれは本当にいい教訓になったし、その後のマリーンズの事業面のいい事例の一つになったと思う」(荒木氏)
04年の球界再編後、千葉ロッテマリーンズは球界の先駆者と言われるようになった。様々な分野から新しく球団入りした人材が内部を活性化させた。そして新しいアイデアをすぐに実施した。時には失敗をしたがそれを糾弾するのではなく次回に生かす土壌の中、様々な企画が誕生した。選手たちもまた球団のアイデアに賛同し様々なファンサービスに協力をした。
ビール半額デーは翌06年、さらに客足を伸ばし毎年、続いている。今年も「チケット・ビール半額デー」として8月31日に実施した。今後も既存の概念にとらわれず、いつだって勇気をもって新しい事にチャレンジをするマリーンズでありたいと思う。ビール半額デーを終えて改めて決意を強くした。
梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)
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