3月30日の本拠地開幕戦より千葉ロッテマリーンズで実施をしている売り子ペナントレースにて首位を独走している売り子がいる。4年目のまりなさん。サッポロ黒ラベルを販売するZOZOマリンスタジアムのアイドル的存在だ。1試合平均の売り上げは200杯を超え、開幕から首位を一人旅。現在、2位と1000杯以上の差をつけている。

「元々は従妹が東京ドームで売り子をしていたのが始めるキッカケでした。『楽しいよ』と言われて野球はまったく分からなかったのですがチャレンジしました」

 噂の彼女は清楚系の美人。透き通るような声の持ち主だった。立ち売り販売のドリンクメニュー(ソフトドリンクも含む)を販売している売り子経験5年以内で参加希望者88名によって成り立つ売り子ペナントレースの頂点に君臨し続ける所以が分かる気がした。

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売り子歴4年目のまりなさん ©梶原紀章

売り上げを伸ばした一つのひらめき

 そんな彼女も1年目は苦しんだと言う。忘れもしない2015年6月の雨の日がデビュー戦。初めて買ってくれたのは二階席で観戦をしていた老夫婦だった。

「それが初めての一杯でした。一杯目は思い出深いです。今でもハッキリと覚えています」

 デビュー日の売り上げは24杯。なかなか売れずに苦しい日々が続いた。なによりも15キロの重荷を背負っての業務。雨の日もあれば風が強い日もある。夏は蒸し暑さに苦しんだ。それでも強い気持ちで取り組んだ。「大学の4年間、頑張ろうと決めていたので、途中で辞めるとか諦めるとかは考えていませんでした」。5試合目ぐらいになんとなく一つの感覚を掴んだ。それは通路を横に歩いて売るより、席の下から上への縦の通路を使って売り歩いた方が効果的だという事だった。

「縦だと、お客様に考える時間を作れるんです。一回、下まで行って、上に行く間に買うかどうかを考えてもらって、買ってもらう。横だとそのまま次のゾーンに行くしかないのでお客様は瞬時に買うかどうかの判断を下さないといけない。その違いは大きいなあと気が付いたんです。お客様に考える時間を作ってあげるということですね」

 一つのひらめきは大きな効果をもたらした。なによりも工夫をして結果を出せた事で仕事が面白くなった。さらにいろいろなお客様心理を分析するようになった。様々な発見があり、そのたびに売り上げは伸びていった。9月には100杯の大台に到達した。

「やっぱり一番はお客様目線で物事を考えることだと思います。自分だったら、どういった時に買いたいかなとか、どういう風にしていると買おうと思うかなとか。そういう意味ではチケットを買って他球場に行って研究をしたりもしました」