シリコンバレーでの出合い

 日本において現代アートの歴史は日が浅いですが、当時池袋にあった西武美術館を設立した故・堤清二さんは、自らの事業を「時代精神の運動の根據(こんきょ)地」と語り、国内に国際的な現代アートの潮流を起こしました。

 現代アートの作品は、いまを生きるアーティストが創るもの。だから、時代の気配を取り入れながら生まれてきます。それをどう発信したら、広く伝えられるのかが美術館に課せられた大きな命題です。

 たとえば、森美術館が展示する作品は日本国内のものに限りません。今年3月まで開催された「六本木クロッシング2025展」では、出展した21組のうち11組が日本に暮らす外国人や海外にいる日系人、海外と日本の2拠点生活を送る日本人など、何らかの形で海外と深くかかわるアーティストたちでした。

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「六本木クロッシング2025展」で解説する片岡さん ©文藝春秋

 ニューヨークやロンドン、パリといった大都市ではすでに国境を超えた文化的な活動が盛んであるのに対し、東京は文化的な多様性という意味ではまだまだです。文化芸術については「日本」を国境で区切る必要はありません。多面的な視野で捉えるからこそリアルな姿が見えてくることもあります。

 また、当館を訪れる3人に1人は外国の方です。六本木という立地もあるかもしれませんが、もともと会場内の作品解説は日本語と英語でした。ただ、インバウンド人口が増えるなかで、英語圏外からの来場者が増えています。多言語にどう対応するかは長年の課題でした。

 2025年4月にシリコンバレーで1週間ほど、世界各地の美術館館長に向けたカンファレンスに参加しました。AIも含めた新しい技術を美術館でどう活用できるのか。多くのプレゼンテーションのなかで、あるスタートアップ企業が運営するAIによるオーディオガイドが目を引きました。美術館でアプリを立ち上げると、解説が20以上の言語で聞けるのです。鑑賞者自身にどの程度の専門知識があって、どれくらいの時間をかけて鑑賞したいかカスタマイズもできます。会場内の解説スペースは小さくても、鑑賞者には貴重な資料です。けれど、何カ国語にも訳すのは、空間的にも美術館のマンパワーにも限界があります。そのとき出合ったのが、この「ARTLAS(アートラス)」というアプリでした。どういう形で発展させるのがベストなのか、目下試験中です。

※片岡真実さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい

※約7000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(片岡真実「現代アートはわからなくていい」)。

文藝春秋

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片岡真実「現代アートはわからなくていい」

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生

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