「観客に自分自身の『死』を体験してほしい」

「たしかに大きな喪失が描かれますし、誰もが強い痛みを感じると思います。まさに地獄へ降りていくような映画体験となるでしょう。だからといって私はサディストではないし、観客を酷い目に遭わせたいわけでもない。映画には、恐怖や悲劇とともに深い愛や思いやりも描かれます。そもそも私たちは生きるうえでいろんな喪失を体験し、そのたびに自分の内面を見つめ直す機会を得ます。私は観客に自分自身の『死』を体験してほしい。なぜ人は死ぬのか、ではなく、人はどう死ぬのか。尊厳を持って死ぬとはどういうことなのかを、この映画は問いかけるのです」

©2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U., FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L., 4A4 PRODUCTIONS

 哲学的問いに溢れた『シラート』は、2025年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、スペインやフランスで異例の大ヒットを記録した。

「アルゴリズムが作り出す同じような映画ばかり観ることに、みんな疲れてきたんでしょう。人間の魂を宿した映画が求められているんです。なかには『この映画が何を伝えたいのか全然わからなかった』と言う人もいるでしょうが、その体にさえ、映画は何らかの痕跡を残すはずです。映画を作ることは薬を作る作業と似ています。できた薬は飲んだ瞬間は苦くて吐き出したくなるかもしれないけれど、一度飲めば体内で何らかの作用を及ぼす。だから映画を観た直後、言葉を失う体験はとてもいいことだと思います。何を言ったらいいかわからないまま時間を過ごし、体が慣れてきた頃にようやく口を開く。映画を観る体験とはそれで十分なんです」

オリベル・ラシェ 1982年、スペイン出身。詩的リアリズムと社会的テーマを融合させた独自の映像世界を生み出し、『Mimosas』(16年)でカンヌ国際映画祭の批評家週間のグランプリを受賞、『Fire Will Come』(19年)でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞するなど、高く評価されている。

INTRODUCTION

本国スペインで異例の大ヒットを遂げた後、フランス、イタリアなど公開の始まった各国で立て続けに大ヒット。カンヌ映画祭で審査員賞など4冠を達成したほか、ヨーロッパ映画賞、ゴヤ賞など名だたる映画賞で多数のノミネート。米アカデミー賞では5部門でショートリスト入りし、音響賞、国際長編映画賞の2部門で見事ノミネートを果たした。巨匠ペドロ・アルモドバルがプロデューサーとして名を連ねているのも話題となっている。

 

STORY

砂漠で行われるレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探すため、父ルイスと息子エステバンは、モロッコの山岳地帯から砂漠の奥深くへと車を走らせる。行き着いたのは、現実と幻覚が混濁するような野外レイブのカオス。耳をつんざく重低音、赤い照明の海、沈黙を貫く父親の背中。だがそこにはすでに娘の姿はなく、父と息子は、レイブの参加者グループを追って、娘が向かったと思われる次のレイブ会場を目指すことになるが……。

 

STAFF & CAST

監督:オリベル・ラシェ/脚本:オリベル・ラシェ、サンティアゴ・フィジョル/出演:セルジ・ロペス、ブルーノ・ヌニェス・アルホナ、ブルーノ・ヌニェス・アホナ/2025年/スペイン・フランス/115分/配給:トランスフォーマー/©2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U., FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L., 4A4 PRODUCTIONS

次のページ 写真ページはこちら