劇団「ヨーロッパ企画」を率いつつ、『ドロステのはてで僕ら』(20年)や『リバー、流れないでよ』(23年)、その他多くの映画で脚本を手掛けてきた上田誠が、満を持して初監督に挑んだ。

「いままでもお誘いはあったのですが、演劇と脚本の仕事に追われて、なかなかエネルギーを割けなかった。その機会が訪れました。それに、この映画は自分以外には誰も撮ってくれない気がしたんです(笑)」

上田誠監督 ©︎杉山拓也/文藝春秋

今回は得意の“タイムリープ”ではなく…

 立場を違えて制作に携わることは、作品にどんな影響を与えたのだろうか。

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「監督としては拙さもあると思うけど、制作においてはなんの苦労もなかったんです。なにしろスタッフが優秀で、当初思い描いた以上の作品になった。撮らせてもらったという感覚が大きいです」

©ヨーロッパ企画/トリウッド 2026
©ヨーロッパ企画/トリウッド 2026

 今作『君は映画』では、上田監督が得意とするタイムリープではなく、次元を飛び越えるギミックが用いられる。

「当初はタイムリープを入れたかったんです。もはやトレードマークだし、一生それだけでいいくらいなんですけどね(笑)。でも物語の構造を考えていくと入らなかった。トリウッド(下北沢の映画館)を舞台に映画を撮るとなったとき、ふたりの主人公がスクリーンを通して出会うというギミックは必然であったように思います」

©ヨーロッパ企画/トリウッド 2026

 監督として、そのギミックを生かし切った。

「たとえばカット割りのルールを徹底してリズム感を生むなど、やるべきこだわりをきちんと実現できました。実は映画は舞台と比べるとコメディで戦いにくいと感じていたんです。映画館では笑いにくいというか。でも自分で演出してみると、ちゃんと滑稽で愛おしくもなった。そこはやり抜けたと感じてます。舞台を作るように作れたという感覚かもしれないですね」