亡くなったペットのクローンをつくるには
同社のサイトには、こんなQ&Aがある。
Q 私のペットが今亡くなったばかりなのですが、御社のクローン技術による複製を注文するには、どうすれば良いですか?
A ペットが亡くなったばかりの時、遺伝子の保存、またはクローニングプロセスを成功させるためには、タイミングと適切な手順が重要です。まずは、今すぐ(866)770-7503に電話してください。弊社のカウンセラーが、具体的な情報と手続きについてのサポートをいたします。
亡くなったペットのクローンをつくるには、死んだ後絶対に凍らせないこと。
速やかに冷蔵庫に入れて、できるだけ早く組織生検サンプルを採取しなければならない。添付してある「組織生検サンプルの採取方法」の手引きを印刷し、急いで獣医師に見せてクローン作製のための細胞を採取できれば、120日ほどで、亡くなったペットの生き写しのような犬や猫に再会できる。
悲しみを最新テクノロジーが塗りつぶしてゆく
ニューヨーク北部でセラピストをしている米国人の友人は、子犬の頃から可愛がっているゴールデンリトリバーのマックスが、いつか自分より先にこの世を去ることを想像するだけで呼吸が苦しくなると、しょっちゅうため息をついていた。
ゴールデンリトリバーの平均寿命は10年から12年だ。
ふと思いついて久しぶりに連絡を取ったところ、マックスは10歳になっていた。
だが電話口の彼女の声は、以前とはすっかり変わっていた。
「マックスはおじいちゃんだけど、もう手を打ったのよ。実は死んだ後にそっくりなクローンをつくってくれるすごいサービスがあってね……」
その明るい声を聞いた時の、得体の知れない寒気が忘れられない。
愛する存在を失う悲しみを、最新テクノロジーが「再生産」という解決策で塗りつぶしてゆく。
ハクスリーの「新世界」の中で、死が悲劇ではなく、単なる「生理的プロセスの停止」として、効率的に処理される「日常の出来事」になっていたように。
誰かが欠ければ、代わりの誰かが補充される。
そこには「二度と会えない」という絶望も、取り返しのつかない喪失感もない。
ビアジェン社が提供する「絆の継続サービス」を、愛犬のクローンを予約した友人は「愛の救済」と呼んでいた。
だが本当にそうだろうか。
世界でたった一つ、唯一無二だった存在の複製が、お金で手に入るようになった時、その数百万円で私たちが失うものとは何か。
「痛み」を通じてしか触れることのできない、命への畏怖と尊厳は、一体どこにゆくのだろう。
