アルツハイマー症状の改善

 老化は待ってくれない。

 こうしている間にも、死は確実に近づいてくる。

 富裕層は待てないのだ。人間の欲望には果てがなく、市場はそれに値札をつける。

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 政府が警告を出した後、アンブロシア社はしばらく静かにしていたが、やがて別の名前の会社で〈若返り輸血ビジネス〉を再開、ほとぼりが冷めるのを待って、再び元の社名に戻した。ワシントンに何万人もいる企業ロビイストと弁護士のおかげで、アメリカでは憲法で保護されるほど、事業者が手厚く守られているのだ。

 これを単なる富裕層の狂気と切り捨てられない理由がある。

 スタンフォード大学の神経学者トニー・ウィス=コーレイ博士が発見した血漿カクテルの実験は、ネズミだけでなくヒトのアルツハイマー症状も改善した。

 ドイツのベイルスドルフAG社の研究でも、若い血液の輸血による認知症防止効果が注目されている。若い血液に含まれる特定のタンパク質が、老化した臓器や脳の機能を「リセット」し、認知機能を向上させることは、科学的に無視できない段階に入りつつあるのだ。

 いくら当局が警鐘を鳴らしても、1回8000ドル払える財力があれば、我こそはと試したがる富裕層は、後を絶たない。

血液という「生体情報そのもの」を入れ替える

『すばらしい新世界』の中で、下層階級が上層階級のために奉仕するように、現代の血液ビジネスもまた「金を持たない若者の血液を、金を持つ高齢者が買い叩く」という命の搾取構造を生み出している。

 消費されるのは製品ではなく、他者の生命時間そのものだ。

 そのディストピア的現実が、科学の最先端として提示されている。

 血液という「生体情報そのもの」を入れ替えるという発想は、エンジニア的思考を持つシリコンバレーの住人たちを強力に惹きつけた。どうせなら親と子と孫でいっぺんにやってしまえ、と3世代同時輸血(血漿)を実行する者まで現れた。

 その男の名は、ブライアン・ジョンソン。

 今や不老長寿業界で最も有名な、自らを実験台にし続ける大富豪だ。

18歳の肉体を取り戻す人体実験

 オンライン決済会社を、PayPal に8億ドルで売却し億万長者になったブライアン・ジョンソンは、それまでの生活をあっさりと捨てた。人生の目標を「不老長寿」に設定し直し、自らの肉体を実験台に、年間200万ドルかけて、ありとあらゆる「不老作戦」を実践し始めたのだ。

ブライアン・ジョンソンと彼の息子 ブライアン・ジョンソンのX投稿より

 徹底的に管理された運動と睡眠、厳しいヴィーガン食という基本の上に、毎日100錠30種の栄養サプリを服用、電気刺激に光療法、赤色光療法にハゲ防止のLEDヘアトリートメントと、山のようにあるメニューをこなしてゆく。

 目標は、18歳の肉体を再び手に入れること。

 若い血液輸血作戦も、もちろんすぐに実行した。